河のほとりに立ち 長老が 杖にて河面を打てば 水中から おおぜいの土左衛門が 這いずり出した ◆ 河原にて 長老は天幕を張り 幾千の歳月を数え 幾万の土の器を造った 汝生きよ 天に向かって
長老
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河のほとりに立ち 長老が 杖にて河面を打てば 水中から おおぜいの土左衛門が 這いずり出した ◆ 河原にて 長老は天幕を張り 幾千の歳月を数え 幾万の土の器を造った 汝生きよ 天に向かって
私は妻の病状を危ぶんでいた。 体のどこかが具合が悪い、そんな症状ではなかった。精密検査をしてもどこにも異常はなかった。ただ、日を重ねるにつれ、妻の発言がトテモ正常とは言えない、ほとんど怪奇な状態が続くのだった。……最
今となっては、夢か現実だったか、わからなくなってしまった。それはともかく、私が二十代後半、新橋の神谷町に住んでいた頃、ある一夜の物語である。 どこで飲んでいたのかはもう記憶にない。ずいぶん酔っぱらっていたことだけは確
あなたは岸辺にしゃがんで水の面を見つめていた。水紋が午後の陽射しに反射して、あなたの顔には縞模様の影が揺らいでいた。どうしていいかわからずに、わたくしは黙ってそばに立ったまま、ただ池とそれを取り囲む樹林を前にして一行の
きょうも榎本三知子さんから送っていただいたこの詩誌を読んだ。 詩誌「鳥」第78号 編集者 佐倉義信/なす・こういち/元原孝司 2020年6月15日発行 これで76号から三号にわたって毎日
城の夢を残したまま 宮廷住まいの鳥たちは死んでゆく わたくしのふくらはぎには あなたのくちびるのかたちがいつまでも でも 悔恨なんてしていない たったひとつの死があるだけだから
きのうと同じく榎本三知子さんから送られてきたこの詩誌を読んだ。 詩誌「鳥」第77号 編集者 佐倉義信/なす・こういち/元原孝司 2019年12月1日 一通り読んで気付いたことは、同人に八
うすらいでゆく花園。 この後頭部は、もうすっかりうすらいでゆく花園。 ぼんやり暗くなってしまった。 とうとう頭に夜が来たのか。 後頭部の花園にローソクをともすと、 火は火を招いて、 花びらへめらめら移りゆき
榎本三知子さんから詩誌が送られてきた。彼女とはずいぶん昔、「土星群」という同人誌でご一緒した。私にとって詩作を通じて出会った懐かしい人の一人だった。 詩誌「鳥」76号 編集者 佐倉義信/なす・こういち/
四月の貴公子がかぼちゃ造りの馬車に乗ると、ナノハナの編上靴を履いたフォークとナイフの馭者たちはツツジの鞭を振りかざし、数えきれないモンシロチョウは馬車をヒラヒラ引きずりながら、春の向こうへ、季節の彼方へ。
夢を見ているところを のぞかれていた やがて 頭の南の方角から 一本の指が出てきて 耳の穴を突きとおし つんつん 夢をさわっていた しばらく つんつん していた
けさ七時ごろから池の掃除を始めた。だいぶ水が冷たくなっている。これからは日に日に冷たくなっていくのだろう。 この日曜日の夕方、ご近所のご夫婦がワンちゃんと散歩している際、道路を歩いている亀を見つけた。顔を合わせばよく
午後三時 この団体は 各自一頭の羊を曳き やぐらの下に結集した やぐらの先端は 雲に隠れている 各自一頭の羊を背負い 天に向かって 順次 梯子をのぼると すっかりたそがれ 夕焼け雲の中に彼等は消えた 深夜になって 闇の空
―見世物小屋にて 「世紀の謎、世界の不可思議……」 狭苦しい小屋の片隅で 香具師は前口上をまくしたてている 彼の隣に立っているのが所謂「世紀の謎」 見れば「世紀の謎」の左腕は いちめん
天上の月と 池に光った月の間に 案山子は立ち尽くす 刈り入れは終わり 激しかったあの夏草の命も絶えて 天の月と 地の月の間 落ち葉と 枯れ草の間 なおも案山子は立ち尽くす
鴉の仮面をつけた忍者が、 満月を浴びて黒光りしている屋根瓦の上を滑っていく。その後ろから白装束の天狗が、水に濡らした白足袋をはいてひたひた迫ってくる。一瞬、忍者の顔はクルリと背面へ百八十度ねじれた。天狗に向き合った鴉の
その一 あやめ はるさめにじっとりした帯をとき あやめの一夜がはじまりました 五月闇に沈んだ池のほとりから あがりかまちまで あやめはわらじをはいて 引きずって 宿のぼんぼりに浮かんだ濃い紅
鍵穴ハ 誰モガソウ信ジテルヨウニ 外部カラ内部ヲ開閉スルタメノ マタ 内部カラ外部ヲ開閉スルタメノ 扉ノ付属物デハナイ ムシロ現代ノ研究デハ 外部カラ内部ヲ観察スルタメノ ソレトモ 内部カラ外部ヲ観察スルタメノ 唯一ノ窓
腹の中には やかんがある 腹が立つと 水は煮えたぎって狂う 腹が座ると 水は冷め 底の方からひえびえしてくる 腹が減ると 水の表面が騒がしくて とても眠れやしない
野原に一本の黒くて長い柱が立っていた ちょうど画用紙のまんなかを 上から下まで太い墨の線を引いたみたいに 空といちめんの草が生い茂る風景を二分していた わたくしは昔からそんな草むらで暮らしている 草の実を食べたり 昆虫を
稲光デ 頭ガ裂ケタ ソコニ雨ガ溜マッタ 耳カラ 鼻カラ 口カラ アラユル穴カラ雨水ガ溢レタ 溢レテ足ヲ濡ラシタ タチマチ足下ハ池ニナッタ 万物ハ水デアルカ 雨ガアガッテ 天ハ晴レテモ 夜明ケカラ 日暮レマデ 私ハ池ヲ引キ
確かに声は床から聞こえてきた。…… この物体の前面上部には横長の楕円形になった穴が開いていて、そのまわりにクチビル状の人造肉が取り付けられている。音声を発する際、物体内部から穴を通って外部世界に湿った気体が送られるら
このしわが、 名人芸というものです。 住職は畳の上に白布をひろげ、五六人の参会者の前で、もう数十年来使い古された湯呑茶碗を置いた。正座していた彼等はすり寄り、身を乗り出して、嘆息を漏らした。誰か合図した
新しい詩集が出来ました。 「フォト詩集 親水公園にてー夏から秋へ」 山下徹著 出版芦屋芸術 発行日2022年11月19日 定価千円 表紙絵は山下哲胤、扉の水墨画は清位裕美が描いています。 今
突然フィルムが逆転したのか、床に粉みじんになって散らばっていたガラスの破片が、落下した時とは逆コースをたどって宙に浮かび、テーブルの上でもとのコップに復元されていた。 ここで吉月君の制作した科学映画「反熱力学第二法則
氷の地区はやはり実在していた。 この実在について私はもうこれ以上あなたがたと議論はすまい。確かに彼等は粉末を常用している。その結果、彼等の体温は著しい低下をまねき、既に氷点下に達している。事実、外気と触れ合った彼等の
箸を置いて 茶碗を見つめている お願いいたします 深夜の道場で 膳をはさんで対座したまま やおら オコゲのついた飯粒を箸でつまみ ためつすがめつ眺めて かく語った 先生 まぐ
冬眠が近づいてきた。もう一か月余りすれば、来年の春まで亀は眠りにつく。 朝七時過ぎから池の掃除をしたが、その間、庭を徘徊している亀の動きもかなり鈍くなっている。しゃがみこんで池を掃除している私の周辺をゆっくりお散歩。
ウォークインクローゼットの片隅に 脱ぎ捨てられたまま 八年間 パンプスの中敷きには まだ 足裏の形が 久シブリネ 足をください ねえ その足をください その足を もう一度…… &nbs
終日 死のうと思いつめたら 茶碗まで生物に見えてくる 雨夜がある 香木を握りしめる男
夜ノ唇ハ呼吸ヲ激シクシテ 泥色ノ霧ヲ噴キ出シテイル 見レバ 泥霧ガ流レル門前カラ路地ニ 青空ノ足跡ヲ残シタママ ソウダ モウスッカリ冷メテシマッタ 七十三年間浴ビ続ケタ真昼ノ光線ノ ワズカ二三本ヲ懐ニ忍バセ
寝床カラ起キアガルト 背中ニビッシリ牡蠣殻ガコビリツイテイル ソレハ腐ッタ船底ダッタ ダガ決シテ幽霊船デハナカッタ 何故ナラ 七十三年ノ歳月ガ キャビンデスープヲ啜ッテイル間ニ 過ギ去ッテイタ
メガホンに押しあてた くちびるが たそがれているなら この小さな円錐形を 夕空の涯まで拡大した 見えないメガホンの世界は もうすぐ夜だといえるだろう 無限大の夜の中で くちびるは ひとりぼっちだった
純粋な 暗黒だけが 来た 岸の向こうから だから いま 光っているものは すべてはがれ落ちて 闇のからだになった 光が泣いていた 骸骨が宴会をしていた 無数の骨が浮かんでいた 走っていた どん
友人の市会議員から相談があり、芦屋にドッグランを作ろう、動物と共生する地域にしよう、そういう話だった。 もう亡くなって六年たってしまったが、かつて私はジャックという黒いラブラドールレトリバーを飼っていて、たくさん散歩
京都の町だった。二条城近辺だったのは、確かなことだった。 十代までは京都のあちらこちらを観光した記憶がある。しかし社会人となってあくせくし始めてからこのかた、観光ではなく、時折ビジネスで私は京都を訪れていた。 もう
甲子園浜の西方に今津港があるが、どうやら私はその界隈を歩いているようだった。小さな港の東側には中規模の公団住宅があり、以前私はここを住まいにしていた。最初、十一階建ての最上階、数年後もう少し広い部屋が空いたので八階に移
僕の中で 言葉が爆発していた 濃紺が拡がっていた 無限大だった 大爆発だった
ほんの四十分くらいの間に 七十三年の時間が あふれかえり 波だち ざあと消えていた 午前二時十八分 生きているって ふしぎ だった
朝七時過ぎから池の掃除を始めた。空は晴れているが、少し肌寒いくらい。池から亀を出して私の右足のそばに置いたが、彼は余り動こうとしない。ようやく動き出しても、三十センチくらい離れただけで、円弧を描いて私の足
松岡祥男さんからこんな雑誌が送られてきた。 「続・最後の場所」11号 発行人 菅原則生 2022年7月20日 すべてが力作で、直接読んでいただいて、それぞれ自分で考える、そんな作品集だろ
津田文子さんから送っていただいた詩誌を読んだ。 「座」第73号 発行 座の会 2022年10月1日発行 六人の同人の作品十篇が発表されている。それぞれ詩歴の古い方が書いているのだろう、し
山中従子さんから送られてきた詩誌を読んだ。 詩誌「spirit」Lesson7 編集・発行者 樋口武二 2022年10月5日発行 この詩誌は十九人の作家で二十三篇の詩作品、エッセイ二篇で
おそらく詩歴の長い人たちが書いた作品群だろう。昔なら詩にならないと思っていた言葉の世界が、詩として成立する、そんな新しい発見があった。 詩誌「布」三十九号 2022年9月20日発行 この
まだ一面識もないが、私はこの詩人と互いの個人誌―彼は「アビラ」という個人詩誌を運営しているーを送りあっているので、まるで旧知のごとくおつきあいしている。その彼からこんな詩集が送られてきた。 詩集「松山ん
この詩誌を読んだ。 「現代詩神戸 278号」 編集 永井ますみ・田中信爾・今猿人 2022年9月10日発行 全体の構成は、十七人の作家の詩三十篇、小説一篇、永井ますみの「現代詩神戸の歴史
この詩誌を読んだ。 「リヴィエール 184号」 発行所 正岡洋夫 2022年9月15日発行 この詩誌は、十五人の作家の詩十六篇、エッセイ六篇で構成されている。また、今回は同人の八幡堅造が
二十年余り前、私はある事情で精神分裂病を詳しく調べる必要が生じ、梅田の紀伊国屋書店に並んでいたこの本を手にした記憶が今でも生々しくよみがえって来る 森山公夫編「精神分裂病の謎に挑む」 批評社刊 1999
けさ七時ごろ、池の掃除をした。真夏日のように暑かった九月が過ぎて、十月に入って急に冷え込み、晩秋を飛び越えていきなり初冬になってしまった、そんな季節感がした。 気温が下がって水が冷たくなったせいか、亀は余りご飯を食べ
去年の九月十日の「芦屋芸術」のブログに、私はビンスワンガーの「妄想」の読書感想文を書いておいた。その際、ビンスワンガーの後期に書いた「妄想」の考え方、つまり、精神分裂病を現象学的に解析する方法をより精度に展開したこの本