芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

黒いフスマ

 ボクと妻は南側にある兄夫婦の部屋を出て、隣に移り、フスマを閉めた。振り返ると、ボクラの部屋を挟んで、北側の部屋の畳にバケツが置いてある。そして、左の柱の陰から、前傾した父の首から上だけがヌッと突き出し、床を見つめている

ツェラン、あるいは、ビューヒナーの「レンツ」

 先日、「パウル・ツェラン詩文集」(白水社刊)を読んでいて、ずいぶん昔、ボクが二十代の時に読んだビューヒナーの「レンツ」をもう一度読んでみたくなり、確かまだ手もとにあったはずだと思い、本棚を探した。それは二階の本棚で発見

黒い指

実際は 一時停止して 不意に飛び出した その赤い穴に 肌色の軟膏を塗って 再起動する方がいい あるいは この不具合を完璧に修正するためには その赤い穴に 黒い指を差し込み 埋め込んだままその指を切断して 断面に肌色の軟膏

黒い虫

過ぎ去っていたあやまちの時間 もうすっかり忘れ去っていた過失 すなおに謝罪しなかった汚点 自分が義しいんだと人を裁いた出来事 けれど そんなあなたの罪を罰するために きょう このいまわのきわに おびただしい黒い虫が ぞろ

「プリーモ・レーヴィ全詩集 予期せぬ時に」を読む。

 胸の中には寒さと飢えと虚無しかない  心の中では最後の価値も壊れた。(本書「ブナ」から、9頁)    この言葉は、観念的な虚無の世界を描写したものではなく、ナチスドイツによって製作された人間破壊装置「アウシュ

「パウル・ツェラン詩文集」を読む。

 ボクはまだ二十代前半だったか、もう五十年近い昔の話になってしまうが、梅田の旭屋書店でこの著者の本を立ち読みした記憶がある。「迫る光」という書名の詩集だったと思う。何度か立ち読みした。言葉が発光しているのか、「痛いくらい

ボクの二十四歳の時の作品「月光と白薔薇と」を、改稿しました。

 ぼくが二十四歳の時に書いた作品を改稿しました。    「月光と白薔薇と」 山下徹著     一九七四年五月七日 初稿                 発行日 一九七四年五月二十八日 ガリ版二十部       

ボクの二十四歳の時の作品「月首」を、改稿しました。

 ボクが二十四歳の時に書いた作品を、このたび改稿しました。    「月首」 山下徹著       一九七四年二月十七日 了              発行日 一九七四年五月十五日 ガリ版二十部