芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

ガルシンの「赤い花」

 その昔、岩波文庫で読んだ記憶があり、家捜しした結果、度重なる引っ越しでどこかでサヨナラしてしまったのか、岩波文庫は行方不明だった。家捜ししたというのも、この度アルツィバーシェフの「サーニン」を読むためにネットで買った決

アルツィバーシェフの「サーニン」

 トロツキーは「文学と革命 第Ⅱ部」(内村剛介訳、現代思潮社)の中でわざわざ「死とエロス」という節を設け、アルツィバーシェフ主義や、同じことだがサーニン主義を批判している。この節は一九〇八年五月六日に発表されているので、

カアカア、愛!

 どうやら私は勘違いしていたようだ。今までカアカアはトテモ弱虫でまわりのカラスたちから、ちょっとおおげさな言葉を弄すれば、「迫害」されているものとばかり思っていた。  けさもカアカアは二度やって来た、五時過ぎと七時過ぎに

「現代詩神戸」273号を読む

 永井ますみさんから詩誌が送られてきた。裏表紙を見ると1956年1月8日創刊となっている。長い歳月を生きた詩誌だった。    「現代詩神戸」273号 編集 三宅武・永井ますみ・田中信爾 2021年6月10日発行

トロツキーの「文学と革命 第Ⅱ部」

 先月読んだトロツキーの「文学と革命 第Ⅰ部」の第一版の序文にはこう書いてあった。少し長くなるが、今回読んだ「文学と革命 第Ⅱ部」の要約として著者自身に語ってもらおう。   「第Ⅱ部の諸論文はインテリゲンチャの

雨の中のカアカア

 激しい雨の中をカアカアが来た。いつものウッドフェンスの縁にとまった姿、それは頭から雨水を浴び、まるで小さな黒い蓑傘が立っていた。六月十九日午前五時二十二分。亡妻悦子の月命日だった。  私は戸棚からキャットフード用のポリ

カアカアじゃない、カアカアがやって来た!

 つい一月ほど前、五月十九日の朝、去年の十月中旬までしょっちゅう遊びに来ていた身体障害者のハシブトガラス、あれ以来ぷっつり姿を見せないあのカアカアがいつも止まっていたわが家のウッドフェンスに、一羽のカラスがいた。この日、

「リヴィエール」176号を読む。

 永井ますみさんから詩誌が送られてきた。今回は十六人の詩人の作品十九篇が掲載されていて、エッセイが六篇、そして、「代表交代の挨拶」があった。    「リヴィエール」176号 発行者 正岡洋夫 2021年5月15

後藤光治 個人詩誌「アビラ」6号

 充実した個人詩誌が送られてきた。言うまでもなく、詩も評論もすべて詩誌の編集発行者が一人で書いたものであるが、私の眼で読めば、ある一つの中心軸の回りを回転する作品群だった。    個人詩誌「アビラ」6号 編集発

マヤコフスキーの「ズボンをはいた雲」

 もう五十年くらい昔の話、二十歳前後だったか、私はマヤコフスキー選集全三巻を持っていて、三歳年上の友人に貸してしまった。まあ、「貸す」というのは「やる」という言葉と同義だと承知はしているが、あれから五十年、マヤコフスキー

ワシレフスカヤの「虹」

 数日前に読んだ「決定版ロシア文学全集第28巻」にこんな作品が収録されていた。    「虹」 ワシレフスカヤ著 原卓也訳 日本ブック・クラブ 1972年10月5日六版    この作品は、第二次世界大戦