芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

木星が綺麗だった。

 ずっと天候不順だったが、昨夜八時ごろ、空が晴れていたので、久しぶりに芦屋浜へ出た。  南の空に木星が、明るく、強く輝き、その右方、さそり座のアンタレスが赤い。  頭上にベガ。南東にアルタイル。北東にデネブ。夏の大三角が

井上雅博の「この空の下で」

 言うまでもなく、いかに悲惨な戦争によって身体に障害を残し、あるいは屈辱的な精神の打撃を被っても、終戦後、その心とからだを引きずりながら、おのれの生命の火が消えるまで、人は生を営まなければならない。    「こ

高橋和巳の「憂鬱なる党派」

 この物語の背景を大ざっぱに言えば、戦前、現人神としての天皇をピラミッドの頂点とする軍国主義によって海外侵略した神国日本が、言うまでもなくその神国は明治の日清戦争以降第一次世界大戦まで不敗神話が確立していたが、残念ながら

新詩集「詩篇えっちゃん」が出来ました!

 久しぶりに詩集を作りました。ボクのワイフ、えっちゃんが亡くなってこの七月十九日で五年になります。その日を発行日にしました。    「詩篇えっちゃん」 山下徹著 芦屋芸術 2019年7月19日発行 定価千円(税

井上ひさしの「父と暮せば」

 この戯曲は、広島に住む父子の家庭が原爆に被爆、倒壊した家屋に下敷きになった父を猛火の中で救えず自分だけが避難して生き残った二十歳の娘が、三年後、恋人に出会い、はたして「父を捨てて生き残った」自分が幸福な生活を選ぶことが

堀田善衛の「審判」

 この物語は、一九五九年の社会状況の中で、保守的な大学教授とその妻、その子供たち兄弟姉妹四人、その母方の叔父、彼は戦前、中国の戦線で兵士として民間人の老婆を虐殺している、この彼等家族が住んでいる家に、米国からやって来た男