芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

ジョン・クラカワーの「空へ」

 東京のAさんからのおすすめで、この本を開いた。    「空へ」 ジョン・クラカワー著 梅津正彦訳 山と渓谷社 2019年12月25日初版第三刷    この本の副題は、「悪夢のエヴェレスト 1996年

とうめい体

もうろうとして もつれた 無数の糸 指 足 頭髪 めくれ はがれ もつれ やがて 無数に こきざみに けいれんして とうめいに うすれていく

ベルグソンの「道徳と宗教の二源泉」

 葉脈のように横に広がっていく読書が私は好きだ。ずっと広がっていく先は、ほとんど未知の世界であって、あちらこちらでさまざまな人たちの心の喜びや苦しみが光っている。とてもステキではないか。    「道徳と宗教の二

「現代詩神戸 274号」を読む。

 永井ますみさんから詩誌が送られてきた。永井さんの詩を中心にした同人活動には感服する。    「現代詩神戸 274号」 編集 三宅武・永井ますみ・田中信爾 2021年9月10日発行    十八人の詩人

「リヴィエール178号」を読む。

 永井ますみさんから詩誌が送られてきた。    「リヴィエール 178号」 発行所 正岡洋夫 2021年9月15日発行    この詩誌は十八人の詩人の詩、十九篇、その内の七人の詩人がエッセイを書いてい

彼岸花、石亀。

夏のさなかでも いっぱい ごはんを食べていた イシガメさん 九月のなかばから ずいぶん 少食になって 食べ残したごはんが 小さな池の水面に浮かんでいる   彼岸花が咲いていた

残暑、石亀。

日曜日には たいがい 三十二年間 イシガメが住んでいる 我が家の庭の片隅の 小さな池のお掃除をする   カメさんには 衣食住の衣はいらないが 住環境をととのえてあげるのは 彼の長生きのヒケツ それに ボウフラさ

ミンコフスキーの「精神分裂病」

 先日、スウェーデンの作家ストリンドベリが精神分裂病だということで、精神病理学による彼の症状の分析を知るためにビンスワンガーの「妄想」という本を読んだ。その折、現存在分析や現象学ばかりか、そもそも「精神分裂病」に関する私

ビンスワンガーの「妄想」

 著者は、一九六六年二月五日、八十五歳でこの世を去るが、その死の前年、この論文を発表している。    「妄想」 ビンスワンガー著 宮本忠雄・関忠盛共訳 みすず書房 2001年6月20日新装第一刷  

青春

劣等生だったボクは 勉強がダイキライだった スキナ課目ナンテなかった だから 教室デ ボーダイなムダをツブス ただじっとオスワリシテル それが ボクのセイシュンだった

手紙

川を渡っていた 舟に乗っていたのか 川面を歩いていたのか わからなかった 手紙を届けようと思った

夏の終わり

            ー我が家の玄関先から空を仰いで   目の前の浮かぶ 雲が 好きだ その背景にある 青空も 好きだ その前景にある 我が家も 大好きだ

後藤光治の詩集「吹毛井」

 著者の「あとがき」によれば、書名の「吹毛井」とは著者の故郷、生まれ育った集落の地名だった。ちなみに、「吹毛井」は、「フケイ」と読む。この詩集に発表された詩作品の大半は、吹毛井を舞台にした著者の少年時代の小宇宙を構成して

後藤光治個人詩誌「アビラ」7号を読む。

 よく「心の世界」というが、いったいこれは何を指示しているのだろうか? 人間にだけ特有な現象なのか? それとも宇宙に無質量で偏在する或る本体が、他の生命体よりも人間という類にことさら強く作用した一現象なのだろうか? 物体

鍋谷末久美の「私、ただいま透析中」

 おそらく著者がこの本を書く最初のスタートラインに立ったのは、平成十八年に出版された読書会「若葉」の創作文集に、私は未読ではあるが、「裸足になった私」という作品を発表したからだろう。  この作品の中で、著者はそれまでひた