芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

「現代詩神戸 274号」を読む。

 永井ますみさんから詩誌が送られてきた。永井さんの詩を中心にした同人活動には感服する。

 

 「現代詩神戸 274号」 編集 三宅武・永井ますみ・田中信爾 2021年9月10日発行

 

 十八人の詩人の作品が発表されている。また、前号に引き続き、「松尾茂夫さん追悼」が特集されている。さまざまな傾向の詩が書かれているので、読者はお好みの作品で楽しめばいい。

 私の場合、集中、船越貴穂の二篇の詩を再読三読した。作品「海の中の裸身」は、愛の終わりと捨てられた女の「死」を描いている。作品「潰れる骨」では、癌の転移に病んだ老女のその老醜を映す窓の外に激しい雨が降り続いている。彼女の脳裏には自分の身体が雨に溶けて流れる妄想が浮かんでくる。この二篇の詩は、仏教でいう四苦、生老病死の如何ともしがたい苦痛を特異な美意識で言語化したものだった。ただ、惜しむらくは、第三連二行目、「骨はぐしゃぐしゃにと潰れていく」は、誤植だろう。「あとがき」の批評欄では、「骨はぐしゃぐしゃに潰れていく」となっている。これは原稿から直接引用したものだろう。私は後者を採用して読んだ。この詩の大切な一行なので、敢えて指摘しておいた。