芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

宴会

純粋な 暗黒だけが 来た 岸の向こうから   だから いま 光っているものは すべてはがれ落ちて 闇のからだになった 光が泣いていた   骸骨が宴会をしていた 無数の骨が浮かんでいた 走っていた どん

芦屋市に、ドッグランを!

 友人の市会議員から相談があり、芦屋にドッグランを作ろう、動物と共生する地域にしよう、そういう話だった。  もう亡くなって六年たってしまったが、かつて私はジャックという黒いラブラドールレトリバーを飼っていて、たくさん散歩

再契約

 京都の町だった。二条城近辺だったのは、確かなことだった。  十代までは京都のあちらこちらを観光した記憶がある。しかし社会人となってあくせくし始めてからこのかた、観光ではなく、時折ビジネスで私は京都を訪れていた。  もう

住宅街

 甲子園浜の西方に今津港があるが、どうやら私はその界隈を歩いているようだった。小さな港の東側には中規模の公団住宅があり、以前私はここを住まいにしていた。最初、十一階建ての最上階、数年後もう少し広い部屋が空いたので八階に移

ほんの四十分くらいの間に 七十三年の時間が あふれかえり 波だち ざあと消えていた   午前二時十八分 生きているって ふしぎ だった  

亀、アメジストセージとサルビア・アズレアの下を歩く。

   朝七時過ぎから池の掃除を始めた。空は晴れているが、少し肌寒いくらい。池から亀を出して私の右足のそばに置いたが、彼は余り動こうとしない。ようやく動き出しても、三十センチくらい離れただけで、円弧を描いて私の足

「続・最後の場所」11号を読む。

 松岡祥男さんからこんな雑誌が送られてきた。    「続・最後の場所」11号 発行人 菅原則生 2022年7月20日    すべてが力作で、直接読んでいただいて、それぞれ自分で考える、そんな作品集だろ

「座」73号を読む。

 津田文子さんから送っていただいた詩誌を読んだ。    「座」第73号 発行 座の会 2022年10月1日発行    六人の同人の作品十篇が発表されている。それぞれ詩歴の古い方が書いているのだろう、し

詩誌「spirit」Lesson7を読む。

 山中従子さんから送られてきた詩誌を読んだ。    詩誌「spirit」Lesson7 編集・発行者 樋口武二 2022年10月5日発行    この詩誌は十九人の作家で二十三篇の詩作品、エッセイ二篇で

詩誌「布」三十九号を読む。

 おそらく詩歴の長い人たちが書いた作品群だろう。昔なら詩にならないと思っていた言葉の世界が、詩として成立する、そんな新しい発見があった。    詩誌「布」三十九号 2022年9月20日発行    この

後藤光治の詩集「松山ん窪」

 まだ一面識もないが、私はこの詩人と互いの個人誌―彼は「アビラ」という個人詩誌を運営しているーを送りあっているので、まるで旧知のごとくおつきあいしている。その彼からこんな詩集が送られてきた。    詩集「松山ん

「現代詩神戸 278号」を読む。

 この詩誌を読んだ。    「現代詩神戸 278号」 編集 永井ますみ・田中信爾・今猿人 2022年9月10日発行    全体の構成は、十七人の作家の詩三十篇、小説一篇、永井ますみの「現代詩神戸の歴史

「リヴィエール 184号」を読む。

 この詩誌を読んだ。    「リヴィエール 184号」 発行所 正岡洋夫 2022年9月15日発行    この詩誌は、十五人の作家の詩十六篇、エッセイ六篇で構成されている。また、今回は同人の八幡堅造が

森山公夫編「精神分裂病の謎に挑む」再読

 二十年余り前、私はある事情で精神分裂病を詳しく調べる必要が生じ、梅田の紀伊国屋書店に並んでいたこの本を手にした記憶が今でも生々しくよみがえって来る    森山公夫編「精神分裂病の謎に挑む」 批評社刊 1999

亀とカラス

 けさ七時ごろ、池の掃除をした。真夏日のように暑かった九月が過ぎて、十月に入って急に冷え込み、晩秋を飛び越えていきなり初冬になってしまった、そんな季節感がした。  気温が下がって水が冷たくなったせいか、亀は余りご飯を食べ

ブランケンブルクの「自明性の喪失」

 去年の九月十日の「芦屋芸術」のブログに、私はビンスワンガーの「妄想」の読書感想文を書いておいた。その際、ビンスワンガーの後期に書いた「妄想」の考え方、つまり、精神分裂病を現象学的に解析する方法をより精度に展開したこの本

フォト詩集「親水公園にて」を出版します!

 今年の七月の下旬から十月の初めまでの季節、つまり、夏から秋へ、それを私なりの独自の言語世界で表現しました。    フォト詩集「親水公園にて」―夏から秋へ 山下徹著 2022年11月19日発行    

兵士

 その時には、もう私はかなりの手傷を負っていた。このまま死んでしまうのではないか、この世にしがみつこうとする欲望をほとんど放棄していた。マブタから耳や肩や太ももやら、ふくらはぎ、足首に至るまで、体のあちらこちら血が流れて

親水公園にて 終章

内面劇は ひとまず 沈黙した   頭の中で 親水公園の この夏の日々の断片が 渦巻き 砕け 散乱していた     *親水中央公園の西南端にあるこの橋を一日二回、昼と夕に私は渡った。芦屋浜へ出