芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

すべてをやりとげた!

 去年の年末、ボクは<来年やります!>と叫んで、三つの誓いを立てた。  <そのⅠ>えっちゃんが亡くなってから書き続けている「ふたりだけの時間」という物語を完成させます。  さて、これが第一の誓いだが、本年八月十五日、ボク

シュロモ・ヴェネツィアの<私はガス室の「特殊任務」をしていた>

 この本の著者は、子供の頃、父が理髪店をやっていたので、バリカンの使い方を知っていた。この能力があるため、アウシュヴィッツ強制収容所で囚人の毛を剃る手伝いをするのと引き換えに、ひとかけらのパンにありつくことが出来た。著者

アンネ・フランクの「アンネの日記」

 この本はおそらく、十代の時に読んだ人が多いだろう。感受性豊かだと言われている「青春時代」に読んでこそ、心に残る一冊になるのだろう。だが、ボクはこの歳になって、すなわち七十歳になって、初めてこの本の扉を開いた。 &nbs

十三日の金曜日、その思い出。

 思い出と言っても、まだ数日前の話だが、この歳になってしまうと、未来でさえ、既に思い出だった。  やはり、この十二月十三日の金曜日、一般的に言えばとても不吉な夜ではあったけれど、四人の男、それは山村雅治、北野辰一、國分啓

師走の満月から

 きのうは曇っていて、口惜しい思いをした。でも、きょうは晴れていて、夕方、六時頃、南西の空に金星とその右側に土星が浮かんでいた。きのう、彼等が最接近する日だったけれど。  北西にベガ、西にアルタイル、頭上にデネブ、夏の大

プリーモ・レーヴィの「これが人間かーアウシュヴィッツは終わらない-」

 この著者は、イタリアの化学者ではあるが、第二次世界大戦中、ナチスのトリノ占領に対して反ファシズムのレジスタンス活動を始める。だが、一九四三年十二月十三日、スイスとの国境沿いの山中で国防志願軍(ファシスト軍)に逮捕され、

今年は、原爆文学を読んだ。

 今年は、といってもまだ一ヶ月近い時間を残してはいるのだが、読書に関して言えば、振り返ってみれば、所謂「原爆文学」を中心にした言語体験だった。今年の自分自身を総括する意味で、いったいどんな「原爆文学」を読んできたのか、煩