芦屋芸術|芸術誌・現代詩・小説

持ってる?

わたしの心の中に保存されていることは この世ではどうでもいいことばっかり でも 誰のものでもない わたしの心の中だけに残っていることが わたしには一番大切   死んでしまっても なお 死より強いもの あなたは持

芦屋ビーチクラブ その110

 蒼穹、という言葉があるが、けさの空は、まさにこの言葉がぴったし。  ちょっとネットを覗いてみると、蒼穹は深く晴れ渡った「青空」や「大空」を指す雅語、AIはそう語っていた。  体が青くしみとおる、そんな気がした。  この

亀、分裂、愛。

 結合していた物質が進化の果て、分裂して孤独な存在へ向かっていったのではないか。だから、ふたたび結びあうこと、つまり、愛が、激しい愛が発生したのではないだろうか。  けれど、誤解しないで欲しい。愛といっても、さまざまな愛

夜の片隅から聴こえてくる

S美 ダメだ。今夜も酔っ払っちゃった。   M郎 だったらもっと酔いな。   S美 酔っ払って、鼻糞食べちゃった。どう。あんたにあげる。   M郎 やけに大きい奴だな。   S美 

不可知論

体が 剝がれていく どうしてだろう どこか悪いんだろうか 昨夜も 左足が消えた   右足はまだあるだろうか

詩誌「ア・テンポ」69を読む。

 牧田榮子さんから送られてきた詩誌を読んだ。    「ア・テンポ」69 発行所/「ア・テンポ」の会 発行人/丸田礼子 編集者/牧田榮子 2026年4月25日発行    十人の執筆者が十八篇の詩を発表し

体の花

体の中に咲く花は 恐ろしい 全身から水分を吸いあげている 血も リンパも 下腹部には 濃緑の葉群れが生え 黄色い茎を伸ばし 首すじ辺りに 黒紅色の花が開いている   時に 花芯から白い液を出し 唇を濡らす

怪我の功名

彼女 あなた、外反母趾って、知ってる? 彼 それって なに? 彼女 若気の至りなの。綺麗な足に見せようとして、先の尖ったハイヒールはいてたから、親指が小指の方へ曲がっちゃったあ。 彼 痛い? 彼女 まだ少しだけ。ホラ、見

芦屋ビーチクラブ その109

 きょうは五月の最初の日曜日。  五月最初の芦屋浜のゴミ拾い。  ゴールデンウイーク真っ最中。    五月空。この言葉ぴったしの、どんよりした気配がする浜辺。  北を望めば、空も、六甲山も、どんより。  論より

亀とサツキ(続)

 もう五月になっていた。ツツジは終わりを迎え、サツキが咲き初めていた。  以前にも触れているが、土曜日がやって来るたび私は亀の池を掃除している、その理由は二つある。  一つは、私のようなニンゲンもそうだが、亀だって衣食住

無知

いつも 酔っ払って 自分の脳の中をさ迷い歩いているので はたして 夜空に 星が浮かんでいるのか 輝いているのか   知らない

青い鬼

信号が青に変わったので 私は横断歩道を渡った 左方から小型トラックが猛スピードで走って来る 一瞬 私は見上げた すべての信号が青だった 私は記憶している 体が跳ね飛ばされた 宙に舞い上がった   これが最後の記

脳が騒いでいる

この球体状の内部には 言いたいことが いっぱい    その中身が 目から出れば 目糞        鼻から出れば 鼻糞        耳から出れば 耳糞        口から出れば 歯糞   だったら

左手

肩をたたくものがいる   振り返ってもだれもいない   だが 未明になると   肩をたたいている   左手だけが見える

抵抗

なんだか すべてが 浮きあがっていた 家財道具が 机が 椅子が 茶碗 スリッパ 花瓶 スマホ 冷蔵庫に至るまで すべてが   けれど なぜだ ベッドに 寝転んでいる このワタシという物体は どんどん ずるずる 

芦屋ビーチクラブ その108

 きょうは四月二十六日。日曜日。芦屋ビーチクラブの活動日。ただ、きょうはそれだけじゃなかった。まったく個人的なことで、他愛ない話だが、といって、私にとってはとても大切な日だった。  この日、二十三年前の四月二十六日、私た

亀と私のふたつの命

 思い起こせば、私は幼い頃から昆虫や爬虫類など、小動物に興味を持っていて、彼等と触れ合うことがとても好きだった。まだ小学校低学年だったが、庭の片隅でトカゲを何匹も、いや、二十匹くらいだった、飼っていた。いらなくなった流し

言葉の泥遊び

遊び方も すっかり 変わった 戦後 まもなくに生まれたボクは 毎日 どろんこ遊びをしていた 母は仕事にお出かけ 夕暮れ 帰って来るまで どろんこになって遊んでた ひとりぼっちで   貧しい時代だった ほとんどの

今夜はここまで

少し歪んでいるんじゃないか そんな声が聴こえた 誰だ そこにいるのは 思わずMは叫んだ お前は 誰だ   追いつめられているのは確かだっだ それは否定しない だが いつから あなたは追いつめられ始めたのか この

ひとり遊びとふたり遊び

Ⅰ ひとり    ふたつの手のひら  指 十本  かさねあわせ  乱れ    足裏から  脳天へ  紅紫の火の玉が  燃えあがり    目を閉じて 火炎を見つめる ふたつの眼球  

女ではなかった

 私は毎日、夜の散歩をする。もう七十も超えて少しは足腰の健康のために留意しなければ、そういった主旨で散歩しているのではない。だって、私は脳の中を散歩するんだから。    今夜は三人の男と会った。一度もあったこと

月並み

Ⅰ それでも 光るものがあった 嘘じゃない   あの時 笑っていたけど 裏側では 泣いていたんだ     Ⅱ いまなら わかるけど あの光 それって 愛かも     Ⅲ

芦屋ビーチクラブ その107

 急に夏が来たのか。春はもう終わったのだろうか。    いちいち温度計で計っているわけではない。パソコンで芦屋の一日の天気を調べてみると、この日ごろ、昼間は二十三度前後まで気温が上がっているらしい。特に芦屋とい

亀、そして命。

 昨夜、いつものスナック、金曜日なのに比較的すいていて、スタッフと長いおしゃべりをしていた。   M 最近の若い人はお酒、飲まない人、多いみたい。それにこんなスナックへ足を運ぶなんて、好みじゃないみたい。年収も

さまざまなそれ

通いなれた この散歩道の終わりには いつも あの人が好きだった 花壇をさまよい 花びらを見つめて   紅 黄 紫 さまざまなそれを

友達は、蛇。

 これだけは間違いない話だ。  枕もとに竹で編んだ直径1メートルくらいの大きなザルがあって、その中で暗黒色の大蛇がとぐろを巻いている。  横たわった私と目と目が合うと、彼は笑いながら這いずり出して、ズルズル私の内部へ侵入

沈黙との会話

 しばらく沈黙していたが、リカの方から語りかけてきた。   リカ 誰だって、そうよ。老後は安らかな生活がしたい。人生の晩年はたとえひとりぼっちでも楽しく暮らしたい。そうじゃない?   M …… &nb

神の記憶

 ボクの友達で宗教に肩入れしている男がいた。肩入れ? いや、むしろハマってしまった男だった。ボクは思うのだが、おそらく彼にとっては信じている宗教が絶対で、ボクのような無宗教のニンゲンは批判する対象の生命体だったろう。直接

芦屋ビーチクラブ その106

 きのう、四月十一日(土曜日)午前十二時から芦屋ビーチクラブのメンバー楊軽帆さんの送別会がコレで催された。ご主人の仕事の関係でこの十六日に日本を離れ、一年間、デトロイトで生活。  リーダーの中村さんが二ヶ月間かけて寿司造

Hと夜に

 昨夜、スナックのカウンター席の左隣に座った男と他愛ない話に戯れた。  彼がこの店にやって来る時は、いつも女連れだった。五十代の女だろう。美人系で歌もうまい。このスナックには小さなステージがあり、笑顔を浮かべた彼女はそこ

芦屋川

Ⅰ こんなに愛していても ひとり 芦屋川     Ⅱ 愛の火はいつか消えてしまうから 切ない夜 間を 流れる 芦屋川

ひとりぼっちの告別式

Ⅰ この世と和解してから おさらばしたい そう思っています   この世さん ありがとう いろいろお世話になりました     Ⅱ この世さん あなたを恨むなんてこと もう二度としないから &n

芦屋ビーチクラブ その105

 雨の日が多い。春雨といっても、とてもそんなイメージなんてなくて、むしろ朝夕は冷たい日だった。    日曜日は晴れ曇り。天気予報ではそうなっている。ヨシ。今度の日曜日は洗濯をしてから芦屋浜のゴミ掃除をしよう。

亀、恋し。

 朝七時過ぎ、ダイニングのシャッターをあげると、ガラス戸越しにカラスが一羽、見える。垣根の上にとまっている。私が見つめると、ちょっと恥ずかしそうに身じろぎする。おなかがへってるのだろう。家事より優先して、カラスとスズメた

寄稿文芸誌「KAIGA」No.131を読む。

 原口健次さんから送っていただいた詩誌を読んだ。    寄稿文芸誌「KAIGA」No.131 編集発行人/原口健次 発行所/グループ絵画 2026年3月31日発行    今号も従来通り四人の執筆者で構

「詩人の輪通信」61を読む。

 こんな詩誌を読んだ。    「詩人の輪通信」61 発行所/「九条の会」アピールに賛同する詩人の輪 2025年12月28日発行    この詩誌全体が、平和への願い、祈りを、さまざまな人たちの詩や、講演

もうすぐ 十三回忌だね

Ⅰ 行先なんて なかった 特段 行きたいところもなかった 十二年前に 終わっていた すべて     Ⅱ でも   そろそろかもしれない そろそろ別れ話かもしれない なんだか 長い間 迷い続け

「パニッツァ全集 Ⅲ」を読む。

 残念ながら、この作家の本を読むのも、これが最後になるのかもしれなかった。    「パニッツァ全集 Ⅲ」 オスカル・パニッツァ著 種村季弘訳 筑摩書房 1991年9月25日初版第1刷    これでこの

芦屋ビーチクラブ その104

 三月最後の日曜日。おだやかな朝。春が全身にやってきた感じ。  六甲山もこんなにもおだやか。  けさの芦屋浜の「ゴミ拾い&雑草抜き」は汗ばむくらい。  こんな日がずっと続けばいいのに、私の耳もとに女性のそんな声が

土曜日の朝は亀と

 昨夜、金曜日の夜は五時半から友人となじみのジョヴァンニでイタリア料理を楽しんだ。生ビールの後、赤ワインのボトル。食事中、いつものスナックからスマホが鳴って、キョウハ、来ナイノ? 九時。彼と別れて、ひとり、誘いのあったス

まるごと

ことばだけじゃ イヤよ イヤ ダメ ヤメテ  口先だけって 詩人がやることじゃない? 自分が言ったこと 一時間後には忘れてるのが 詩人じゃない?   まるごと 愛して

このまま ずっと

 密室に閉じ込められているのだろうか。暗くて出口さえ見えなかった。いや、この部屋に机があるのか、椅子があるのか、そればかりか、壁さえどこにあるのかわからなかった。おそらくあなたがたはそんな馬鹿な話があるはずがないじゃない

新しい姿

いつ帰って来てくれても いいよ もう一度 やりなおそ もう 十二年も会ってないんだから    だったら   楽しみがひとつある 肉体はすっかり焼いてしまったので どんな姿で帰って来るのだろう

詩誌「ガーネット」Vol107を読む。

 高階杞一さんから送っていただいた詩誌を読んだ。    「ガーネット」Vol107 編集・発行/高階杞一 発行所/空とぶキリン社 2025年11月1日発行    この詩誌は「追悼 大橋政人」が特集され