芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

知能を持つ穴

緻密な穴があるのがわかった

どうやら その穴は いったん潜りこんだら

二度と脱出できない構造になっているらしい

そんな噂が拡散したため

誰もがこの穴の存在を知りながら あえてもぐりこみ

その構造を明らかにせんとする研究者はいなかった

しかし 考えようによっては この穴にとって

それが幸いしたに違いなかった 穴の向こうは

深夜の絶壁だった いや 待て  そうじゃない

穴の向こうは 雪崩だ この世に存在するすべてが

雪崩を打って崩れてゆくのだ

だが 実は

けさ わたくしはこの穴の向こうから帰還したところだ

下半身は消えてしまった

けれどわたくしはまだ死体化していない

どちらかといえば腰から上はさらに鋭敏になって生存している

気をつけろ

この穴は知能を持っている

見事な知能犯だ!

家の整理が終われば

午後からもう一度穴の向こうへわたくしは行こうと思う

この世にオサラバだ

穴の向こうは やりたいほうだい いわば極限の快感だらけだ!