芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

芦屋ビーチクラブ その90

 きょうもまた、朝から芦屋浜の雑草を抜いたり、ポイ捨てされたタバコの吸いガラ、ストロー、チリ紙などを拾ってみたり。でも、地球を美しくしよう、あるいはそれに類似した理念など、私にはさらさらない。ただ、十一年前にあの世へ旅行

動きはスローで

 土曜日は亀の池の掃除をしなければならないので、昨夜は二軒のスナックを回ったが、午後十一時半ごろ帰宅した。  七時前に起きて顔を洗い、いつものように家事をあれこれ始めた。庭掃除の後、黄金色に枯れてしまった桔梗を剪定。そし

透明になった「私」

 いったい何がしたいんだ。訳が分からない。ダイニングの床暖房の壁スイッチにマヨネーズを渦巻状に絞り出して掛けている。さっきからそんな馬鹿げたことをやっている奴。ここからは後頭部と背中しか見えない。そのうえ画面がぼやけてち

甘い音

 音が聞こえることはないだろうか。ひょっとしたら、これは音じゃないかと。  そんなとき、あなたならどうする?    二三日前にこんな質問をあなたにしたら、即座に逆襲されたね。こっぴどく。「音」っていうけど、それ

色が変わっていく

 特段、これといって重要なことではなかった。従って、私は会社でも報告はしなかったし、家族に、実はこんなことがあった、そんな打ち明け話などこれっぽっちもしていない。    だが、それでも、なぜか心の底では、うずく

オクターヴ・ミルボーの「責苦の庭」を読む。

 過日ご紹介したアンリ・ド・レニエの「碧玉の杖」に続いて、フランス十九世紀の世紀末作品をもう少し読んでおこうと思う。    「責苦の庭」 オクターヴ・ミルボー著 篠田知和基訳 国書刊行会 1984年6月20日初

つきまとわれて

 きょうは月曜日だが、いつも土曜日にやっている亀の池の掃除をした。というのも、先週の土曜日は町内の自治会の役員会が午前中にあって、私は今期の役員になっているから。  そろそろ十一月も終わりに近づいた。寒くなって、亀はのろ

芦屋ビーチクラブ その89

 このところ、連日、青い空が続いている。雲よりもずっと、青がたくさん。もちろん、芦屋浜の海も、いちめん、青。  きょうも浜の雑草を抜いていた。しつこいようだが、また、しつこい男と言われようが、私はこれだと決めた物事は反復

飲んで、治す。

 きのうは朝目覚めると、体がトテモだるい。盛んに咳込み始めた。去年もこんなことがあったのを思い出した。そうだ。まだ、ある。洗面所の棚に、残っている。  この咳止めの薬はひと箱十六錠入り。四錠残っていた。一回一錠。朝と昼に

得体の知れない夜

 この物語にはたくさんのニンゲンが登場する。たまたまラッシュアワーの時間帯に紛れ込んでしまったのか、地下鉄なのか、郊外電車が首都へ向かっているのか。だったら朝の出来事だろう。しかし考えようによっては終業のベルが鳴り、帰宅

もの忘れの果て

 最近もの忘れが激しくなったのか。確か阪神電車の梅田駅からこの特急電車に乗ったはずだ。知り合いの女性と二人だったが、あれこれ話に夢中になっている間に、吊革を握って隣に立っている女性も話に加わってきた。阪神尼崎駅じゃないだ

詩誌「リヴィエール」203を読む。

永井ますみさんから詩誌が送られてきた。    「リヴィエール」203 発行所/正岡洋夫 2025年11月15日発行    この詩誌は16人の詩人が18篇の詩作品、7篇のエッセイを発表している。さまざま

アンリ・ド・レニエの「碧玉の杖」を読む。

 フランスの十九世紀末の作品を読もうと思って、この本を手にした。    「碧玉の杖」 アンリ・ド・レニエ著 志村信英訳 国書刊行会 1984年5月20日初版第一刷    著者は1864年に生まれ、19

円形のもの

闇の中で 輝いていた こんなに深い 闇の中で   それは ひとつの 円い 顔 だろうか   光の中に彼の身を沈めるほどに

芦屋ビーチクラブ その88

 これを小春日和というのだろうか。おだやかな朝だった。  芦屋浜。風もなく、いちめん、青。もう冬に届きそうな晩秋になって、夏場よりゴミの量は少なくなってきている。風がないせいでもあろうか、水辺には漂着物もほとんどない。

亀と虚空

 昨夜は、いつものスナック、一軒だけで長居してしまった。客足が遠い。巷は少し不景気なのかもしれない。早く閉める店が増えてきている気がしないでもない。このスナックも金曜日の夜だが、私も含めて七人の客が出たり入ったり。私だけ

私のもとに「別冊關學文藝」七十一号が届きました!

 私のもとにこの文芸誌が届きました。    「別冊關學文藝」第七十一号 編集人/浅田厚美 発行人/伊奈忠彦 2025年11月10日発行    私が年二回出版しているこの文芸誌にお付き合いさせていただい

それだけ

鈴の音? 幻聴? 耳鳴り?   灰と赤が混濁した空間   だから ここに あるのは ただ よっつ だけ 鈴らしき音と両耳 夕焼け状態の空間と両眼   じっと ずっと これからも それだけ?

女(ひと)、それぞれ

   薄暗い廊下をたくさんの女性が列をなして歩いていく。Mはその最後尾で彼女たちの後をついていく。みんな廊下を右に曲がっていくが、彼の前を歩いている女だけはそのまままっすぐ歩いて突き当りの部屋に入っていく。彼は

このまま じっと ずっと ぞっと

 三度三度の食事は今のところ、問題なかった。食べることが出来なくなれば、死が近い、昨夜そんな話を耳にした。寝ている間に耳にしたので、これが例の夢のお告げというものか。  そういえば彼女が亡くなってもう十一年が過ぎてしまっ

YOUはここにいる 第三章

 こんな事件があった。  スナック<ヨコハマ>は、カウンター席とボックス席の間に四メートルくらいの空間があり、静かなチークダンス程度で遊ぶことが出来る。そしてその奥には小さなステージがあり、歌を一人で、時にはデュエットで

芦屋ビーチクラブ その87

 きょうは未明から雨が降り続いている。芦屋ビーチクラブの活動は中止。  町内の自治会の総会があり、また十一月から本年度の役員でもあり、私は朝十時前に潮芦屋交流センターへ出向いた。参加者は十九名。七十戸余りある地区だが。参

亀と悲恋

 昨夜は早くスナックを引き上げた。十一時半には帰宅した。というのも、土曜日は亀の池の清掃を終えた後、午後二時から大阪で「日本詩人クラブ」の例会があり、私は会員ではないがある人から誘いを受けているのだった。  いつも金曜日

文芸誌「対角線」を読む。

 今村欣史さんから詩誌が送られてきた。    「対角線」2号 編集発行人/芦田はるみ・神田さよ・山下輝代 2025年9月1日発行    この文芸誌は十人の作家が、「漢詩」一首、「川柳」十句、「「俳句」

詩誌「ア・テンポ」第68号を読む。

 牧田榮子さんから詩誌が送られてきた。    「ア・テンポ」第68号 発行所/「ア・テンポ」の会 発行人/丸田礼子 編集人/牧田榮子・内田正美 2025年10月25日発行    この詩誌は十人の詩人が

ダメよ 死が玄関で待ってるから

安心なさい   この人差指だけでいいから   しばらく じっと その唇でくわえて   なんだったら この中指も 許してあげる   でも もう ちょっと だけよ ちょっと だけ

こんな時間もありました

 小料理屋のカウンターに二人並んで座って、マユロンは生ビール、Mは日本酒を飲みながら、一ヶ月会わなかった時間を埋めるように、まくしたてているのだった。カウンターの中に立っている六十代のシェフは笑いをこらえて、包丁を握りし

ピエエル・ルイスの「ビリチスの歌」を読む。

 つい先日、「アフロディテ」という作品を読んで十月末にブログに読書感想文を投稿したが、このたび、同じ著者のこんな作品を読んだ。    「ビリチスの歌」 ピエエル・ルイス 鈴木信太郎訳 講談社 1994年6月10

芦屋ビーチクラブ その86

 きょうは十一月最初の日曜日。やはり私は朝、芦屋浜の雑草を抜いていた。  おおよそ一時間、東西を走る堤防の階段近くに生えている雑草とその周辺に落ちているゴミを拾い続けていた。  ずっと気になっていた。堤防のちょうど中間点

亀、晩秋、哀愁。

 昨夜は九時頃まで、それなりに強い雨らしい雨が降り続いていた。一軒目の阪神西宮近辺のスナックを引き上げたのは十一時を過ぎていただろうか。雨は上がっていて、傘を置き忘れてしまった。よくある話だが。  次の芦屋のスナックでも