芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

遅い朝ごはん

 朝八時ごろ、ダイニングのガラス戸越しに見ると、ウッドデッキの手すりにスズメたちが止まっている。朝ごはんを待っている。そんな彼らの姿を私はスマホに収めた。    木曜日、金曜日と夜遊びをしていた。誰のせいでもな

進化

M リカちゃん、最近ネットでも頻尿の話題が出てるだろう。ボクはね、ボクなりに解決したんだよ。   リカ ヘエー。教えて。参考にするわ。   M 例えばトイレがなくってモヨオシタ時、困るじゃないか。ちょ

このまま顔も崩れていくのか

 誰かいたのかもしれない。気配だけはした。  さまざまな顔が脳裏に流れては、消えていた。  だが、この気配は彼等の顔ではなかった。    では、いったい、誰の顔だろうか。見えない顔。だったら、自分の顔じゃないか

死は一度だけ

もう何度もあなたに いや あなたって 言ったって 言葉の綾で つまり なんだな この自分自身に語り続けてきたんだが そうじゃないか けっして心ではない 体だ 体が消えるからこんなに痛いほど悲しいのだ   結局 

「芦屋芸術」二十五号を出版します!

 「芦屋芸術」二十五号の編集・校正が終わりました。あとはPDFに変換して、いつもお願いしているコーシン出版で印刷・製本していただくだけです。三月一日発行です。  本号の内容は以下の通りです。奥付も入れて204頁です。  

芦屋ビーチクラブ その95

 昨夜は満を持して待機していた。  夜の街を歩かず、おとなしくしていたのだった。  それはもちろん、きょう、日曜日、朝の芦屋浜へ出かけるためだった。言うまでもなく、浜のゴミを拾うために。  しかし、雪だった。かなり強く降

やはり、スズメのお宿、だった。

 朝九時過ぎ、一階のダイニングからリビングへ、そして寝室へとシャッターをあげていくと、スズメたちが眼前を飛び交ったりして、空中を夢中で飛び回ったりして、朝ごはんの催促。  というのも、昨夜、習癖にまでなったスナックで酒を

収穫物

 滑り落ちていくのではないだろうか。これといった理由もわからないけれど。だったら、誰かが仕組んだ罠かもしれないが。それならそれなりに理由があるはずだ。罠を仕掛けるなら、それなりの理由が。それは特定できるのだろうか。いや。

光る斜面

陽のあたる斜面を歩いていた いちめん 光っていた   光の中に 耳が浮かんでいた 左耳か 右耳か それはわからなかった   わからないけど 耳なのは確かだった  

詩誌「リヴィエール」204を読む。

 永井ますみさんから詩誌が送られてきた。    「リヴィエール」204 発行所/正岡洋夫 2026年1月15日発行    この詩誌は十五人の詩人が十七篇の詩作品、また、エッセイを九篇、小田悦子さんの追

スミレの詩集「と、私」を読む。

 こんな詩集を読んだ。    「と、私」 スミレ著 発行/本のおうち 2025年7月7日初版第1刷発行    この詩集は、四章に分かれていて、「母」の章に7篇、「父」の章に4篇、「祖父」の章に8篇、「

芦屋ビーチクラブ その94

 きのう、きょうと春が近づいた、ついそう思ってしまうくらい穏やかな日が続いている。けれど予報では火曜日から寒気がやって来る、すると、どうやら、やはりまだ冬なのか。    昨夜はどこにも行かず、飲み歩かず、自粛し

芦屋の夜の片隅で

     やはり古い歌ばかり唄っていた。まあ、古いといっても、戦後の昭和の歌、私と同時代の歌だが。  いつも金曜日の夜に通っているスナックで、ママの友達が京都から来ていて、私の左隣のカウンター席に座っ

透明物体

リードを持って歩いていたのは 確かだった だが いったい どんな犬を連れて 歩いていたのか 不明だった   どうしてだろう 目を凝らして見つめ続けたが リードの先は 誰もいない 何もない 透明な空間 そればかり

裂けたままで生きる

M 左足首を骨折して、ちょうど二か月だね。   マユ そう、きょうでちょうど二か月。   M 具合どう?   マユ 初診の時、二か月で治るはずだった。固定しないで、湿布だけになると。 そんな

冬の真昼の芦屋浜

冬の真昼 芦屋浜に出て 海の前に立っていた   ことし 七月十九日 えっちゃんの 十三回忌まで 彼女に捧げるステキな詩がたくさん書けますよう 祈っていた   でも いったい 何に向かってボクは祈ってい

長電話の町に住んでいた

 ゴミゴミした町を歩き回りながら、スマホを左耳に押し当て、電話をしていた。最初、仕事の話かと思っていたが、どうやらいつのまにか話題が変わっていて私生活の秘密めいた打ち明け話になっているのだった。そうやっておそらく半日以上

朝餉を督促するスズメたち

 昨夜から今日の未明にかけて、無名の歌姫の歌を聴いていた。  通いなれたスナックで昨年十月ごろだったか、出会った女性。彼女の歌、そしてその歌っている姿が、ステキで、少年みたい。  二日目前の金曜日、スナックで飲んでいると

酒とスズメと

 午前零時になってしまった。もっと早く帰るつもりだった。十時ごろになったらタクシーを呼んでね。チーママにこうお願いしておいたのだが、だが、だが、引きとめられて遅くなってしまった。  というのも、喜んでいいのだろう、カウン

ほとんど

あなたは かわいそうな人だね もうほとんど 空中分解寸前じゃないか   足首の上に くちびるが浮かんでいる

ジョルジュ・ロデンバックの「死都ブリュージュ/霧の紡車」を読む。

 以前読んだ本でも、まったく記憶に残っていない本、そんな作品もあるのだろうか。その理由は、今となれば、わからなくもないのだが。    「死都ブリュージュ/霧の紡車」 ジョルジュ・ロデンバック著 田辺保・倉智恒夫

足首だけ

水が流れているが どこで流れているのだろう 碁盤の上に並べられたような黒白の石が敷き詰められたゆるやかな斜面を 流れているのは 確かだった だがその先は 見えない そもそもどこから水は流れて来たのだろう 振り返っても 見

昨夜、崩壊過程を議論した。

 ゆっくりだったのかもしれない。いや。ちょっと違うだろう。むしろ、それは、いきなり、だった。川で言えば、山奥を流れる、急流だったと言っていい。岩から岩へと自ら悲鳴を上げながら、裂け、ちぎれ去って滝つぼへ墜落していく……今

芦屋ビーチクラブ その93

 今年最初の日曜日。今年最初の芦屋ビーチクラブの活動。  誤解しないで欲しい。「活動」といっても、そんなおおげさな、例えば政治の活動とか、そうじゃなくて、極めてつつましい、芦屋浜から出来るだけゴミをなくしたい、それだけだ

中身は消えていく

 こんなところに財布が落ちている。レンガ色をしたタイル張りの長い階段を上っている途中、踏み面から黒革の財布をMは拾いあげた。ためつすがめつして、彼は確信した。「アレ、これボクの財布じゃないか」。念のためセカンドバッグの中

年始から忙しい

 きょうは確かに一月二日だと思っていたが、早朝三時半に起き、作品をひとつ仕上げ、ブログに投稿していた。そのあと、「芦屋芸術」25号の編集・校正作業。年末から始めて、今号の投稿者の作品を元日までに四名分校正を終え、ゲラを作

初日の出2026

 朝七時前に芦屋浜へ足を運んだ。  初日の出を見た。  長い間見つめていた。浜の彼方にあがっていく太陽。  おそらく私は強烈なエゴイストなのだろう。今年こそいい作品が書けますよう、祈っていた。私にとって「いい作品」とは、