芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

透明物体

リードを持って歩いていたのは

確かだった

だが いったい どんな犬を連れて

歩いていたのか 不明だった

 

どうしてだろう 目を凝らして見つめ続けたが

リードの先は 誰もいない 何もない 透明な空間

そればかりか このリードを手にする前は 自分でも信じがたいんだが

ゴルフをラウンドしていて クラブを 五番アイアンを手にしていた

 

パースリーのショートホールだった

奥に打ち込んでしまい グリーンを外してしまった だが

ピッチングの第二打が ピンそば

パーチャンスだったんだ でも ここで何故か……

 

いきなりゴルフは中断され フィルムが切れたのか

まばたきしてる間に Mはリードを手にしていたのだった

肉眼では見えない 透明な犬を連れて もちろん 犬とは断言できないが

少なくとも リードで彼を引っぱる 透明な物体がいる 

 

間違いない それは いまでも はっきり断言できる

でもね うつむくと リードは消えて レストランで 

右手にナイフ 左手にフォーク

肉料理が置かれたテーブルを前にして

 

赤ワインを飲みながら いま 肉を頬張っている

信じて欲しい Mは対座している女に真顔で語り続けた

何故そうなのかはわからないんだ さっぱり

ただ そういうふうにこの世は作られている それしかないだろ?