芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

亀とともに八月は去りぬ

 台風十号の影響で朝方まで小雨が降っていたが、九時過ぎ辺りから雨が上がり、今にも雨が降り出しそうな気配の中、土曜日恒例の亀の池の掃除を十時くらいから始めた。  おかげさまで初志貫徹。無事終了。きょうは、いやにカラスとスズ

マーヤー、あの女だろうか

 胸騒ぎがして目が覚めた。午前三時。まだ二時間余りしか眠っていない。もう明け方だと思っていたのだが。  だとすれば、ほとんど眠らなかったのだろうか。女が出て来た。見覚えはなかったが、なぜか激しく心が惹かれてしまった。待て

地球担当者の悲哀

 地球担当課の担当者は困惑していた。いまさら廃墟と化してボロボロになってしまったこの惑星の調査命令を出すなんて、いったい本部は何を期待しているのだろうか。  しかもこの惑星上の歪んだミミズ状の小さな島という特殊エリアだけ

中塚鞠子の詩集「水族館はこわいところ」を読む。

 誤解を承知の上で、私はこの詩集の読後感をこう表現したい。「おもしろい」作品集だった。再読三読した。私の持論だが、詩作品も他人に読んでいただくことを前提しているのだから、読み物として面白い、その辺りも大切ではなかろうか。

芦屋ビーチクラブ その44

 夜から明け方まで激しい雨が降っていた。きょう、芦屋浜の清掃作業は中止になるかも。だが、雨はあがった。急ぎ足で快晴へ移った。  浜は雨の影響もあるのか、ゴミがたくさん漂着していた。先週よりも風があり少し過ごしやすいが、そ

ポーズする亀

 昨夜はスナックで飲み、午前零時半ごろベッドに横たわった。  朝五時過ぎ起床。家事や庭掃除。カラスたちやスズメたちに朝ごはんを用意して、庭の水撒き。夏場、水撒きするのは夕方の方がいいのは分かっているが、その時間帯は既に体

失意

まだらになることがある 全身が まだらになってしまう きらびやかな衣装に包まれて暮らしていると みんなにうらやましがられて けれど ひとりで鏡の前に立ってみれば からだじゅう まだらだった     返歌 あなた

皆勤賞

 疲れた。もうもうとしている。といって、牛じゃあないけれど。  だったら、横になって、しばらく休みな。  君、優しいね。それじゃあ、言葉に甘えて、寝るとするか。  あした、冷たくなってるかもしれないけれど。  うん、そう

小さな人

 頭の中に白い花が咲いていた。右耳のそばあたりに。  だんだん、右耳から頭頂へ、頭頂から左耳のあたりまで、花が咲き乱れてきた。  小さな人がいて、花を摘み、大きな花束を抱えて、口から出ていった。  目覚めると、頭の中はす

ゼリー

 変な話だが、赤い色に追い込まれている。でも、色に追い込まれるって、どういうことなんだろう? よくわからないので、しばらく考えてみた。そのうえ、すべての色の中で、ただ赤い色だけが、追い込むのだ。  もしかして、顔色のこと

髪の毛から

 こうしてわたしはこの世に帰ってきた。自分ながら離れ業だと思った。みんななかなか離してはくれなかったから。  といって、あの世が実在すると主張するために、この文章を書いているわけではない。そんな面倒なことなんてどうでもい

レーモン・ルーセルの「額の星/無数の太陽」を読む。

 過日、私はこの著者の長編小説を二作、「ロクス・ソルス」と「アフリカの印象」を読んだ。一応「長編小説」と書いてみたが、一言で言えば「詩的奇書」と呼ぶのが相応しいだろう。もう一歩言えば、むしろ従来の小説を否定するロマンだっ

芦屋ビーチクラブ その43

 きょうは日曜日。朝八時から芦屋ビーチクラブ。比較的ゴミは少なく、清掃作業ははかどった。  それはともかく、今日は特別な日。リーダーの中村さんの家で作業終了後、有志で九時過ぎからバーベキュー。余りの暑さに、上半身裸になっ

ベガの南東に

波が見える あなたはお椀の小舟に乗って 揺れる この世の海から 水平線を離れ 椀が浮かぶ 夏の夜空へ ベガの南東に

池で遊ぶ亀

 昨夜、阪神芦屋駅界隈を飲み歩かなかったため、未明二時過ぎに起床。「閉門」という題の詩と絵を一篇、芦屋芸術のブログに投稿。そのあと、読書などをして時を過ごす。六時から家事や朝食を終え、庭掃除とカラス夫婦、スズメたちに朝食

閉門

 ずっと門を開いていた。さまざまなものが出たり入ったりした。人ばかりではなかった。猫や犬、カやハエやゴキブリまで、出たり入ったりしていた。そんな明け暮れを彼は「人生」と呼んでいた。  しかし、出て行ったきり、二度と帰って

あい色の画面に黒い木がならんでいる。夜景を描いているのだろう。もう昼近いのに、頭の中は夜だった。

そんな気持ち

 懐かしい道がある。それぞれの人の思い出の中で、それは一本の道かもしれないし、あるいはまた、複数かもしれない。  もう二十一年も前の話だ。そこは高台になっていて、まだ新しい公園で植えられたばかりの低い樹木越しに海が見える

チリメンジャコ

「もう終わったのよ。しっかりして。」 そんな声がして 未明に目覚めた ここは 肉も実もない 骨だけで構成された物体が遊ぶ宴会場 二百畳くらいの日本間で小さな舞台もついている あやつり糸もないのに 百体くらいの物体が踊りは

お湯が沸くまで

 次元によって変わるのだろうか。それならば、彼もまたさまざまな次元に存在していて、その次元ごとに与えられた運命があり、さまざまな次元、さまざまな生命体、あるいはさまざまな物体、例えば石になってみたり鞭になって牛馬や人を打

両手切断

 まだ生きている、彼はそう思った。彼女を喪って十年が過ぎていた。爆発物取締法違反容疑。罪名はいくらでもやって来た。恐喝未遂罪。パワーハラスメント。無根拠誹謗罪。男女差別容疑。同性愛拒否侮辱罪。反対運動酸化剤、いや違った、

闇は闇のままで

「わたし殺せなかった」  この言葉が、いつまでも鮮明に刻まれている。  彼はそれ以上の詳細を彼女に尋ねなかった。もうどうでもよかった。今になってみれば、あの時、最も可能性のあった犯人は、おそらくあいつだった。しかし、それ

亀と洗い場

 昨夜、いつものスナックで飲んで、帰宅したのは本日午前零時半。そのままベッドに朝まで横たわっていた。  きょうはやらねばならないことがあった。家事や朝食を済ませ、庭掃除、カラス夫婦とスズメたちのお食事。また連日の猛暑のた

闇と愛

 意外と早いのかもしれない。彼は両てのひらを見つめながら、椅子に座り、じっとうつむいていた。死刑がやって来るのは。  留置場に二十三日間の拘留。その間、脳裏にさまざまな顔が現れる。さまざまな。しかし、彼女は現れなかった。

犯人

 誰が仕組んだ罠か。思い当たる筋をたずねてみた。あらゆる可能性のある道筋をたどってみるのだった。  こちらの細道から行けば、崖から転落する。だから、これではなかった。それじゃあ、この道だろうか。この道だと、国道四十三号線

真昼のひとり言

なぜ出てくるのだ。今頃になって。なぜ? すると、ナーゼ、そんな反響音がした。 こんな狭い部屋で、こだまか。バカにしやがって。お話にもなりゃせん。こん畜生め! すると、チクーショー、チクチク。こんなこだまが返って来た。 ひ

砂戦争

 何が鳴っているのだろう。よくわからなかった。川の流れる音がしているが、この辺りにそんなものがあるはずはなかった。荒地のはずだった。それじゃあ、地下水でも流れているのか。長年この家に住んでいるが、そんな噂はついぞなかった

抹消登録

<Ⅰ>  何か手違いがあったようだ。契約上の問題で、彼も関係した以上、無視するわけにはいかなかった。  特殊な請負契約上のトラブルだった。元請A社の全ての賠償責任をB社が担保する契約だった。この「全て」という文言が、B社

芦屋ビーチクラブ その42

 きょうは午前三時前に起きて、「天井で音がする」という詩と挿絵を作りブログに投稿。そのあと、ネットでニュースをパラパラと確認。恵贈していただいた故冨永滋氏の死後出版詩集「未完の愛の詩集」を読了。いずれ再読してブログに感想

天井で音がする

くるくる している くるくる 音がしている   くる狂る 狂るくる 狂るくる くる狂る   来る日も 来る日も 狂る狂る 苦る苦る   けれど また 今夜   頭の中が ひっくり返

それでも私は亀と遊ぶ

 連夜飲み歩き、午前零時過ぎの帰宅の為、朝遅く六時半の起床。歯磨きから始まり家事全般をつつがなく終える。きょうもまた庭掃除、カラス夫婦とスズメ四十羽、いや、五十羽はいるかもしれない、彼等の朝ごはん。連日の強烈な日照りを思

レーモン・ルーセルの「アフリカの印象」を読む。

 今年の四月に同じ著者の「ロクス・ソルス」を読んだが、このたびは、この作品を読んだ。    「アフリカの印象」 レーモン・ルーセル著 岡谷公二訳 平凡社 2019年6月10日初版第2刷    この作品