芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

レーモン・ルーセルの「アフリカの印象」を読む。

 今年の四月に同じ著者の「ロクス・ソルス」を読んだが、このたびは、この作品を読んだ。

 

 「アフリカの印象」 レーモン・ルーセル著 岡谷公二訳 平凡社 2019年6月10日初版第2刷

 

 この作品は一九一〇年に自費出版され、初版が品切れになるのに二十三年かかったということである。初版が一体何部発行されたのか詳らかにはしないが、品切れになったその年、一九三三年に著者は自殺して、五十五年の生涯を閉じている。誤解を招くのは承知の上だが、著者の作品世界を超える作品を彼があんなにも嫌悪した現実世界で一生涯をかけて完成したな、なぜか私はそう思わないではいられなかった。

 奇想や妄想のつづれ織り言語集成、そう言った観を呈した長編小説だった。そして、たくさんの奇想や妄想が精密に組み立てられ言語化されているのだが、それぞれの言語化された小品同士には何の脈絡もない。ただ演芸会の出し物が次々に変化して終幕を迎えるのだった。そこには何もなかった。いや、違う。厖大な虚無の幕が垂れ下がっていた。