芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

スズメのお宿

 いつ頃からだったろうか、私がスズメと仲良しになったのは。  思い起こせば、最初、私はカラスと仲良しになったのだ。そのカラスは羽を傷めた、身障者だった。偶然かもしれない。そのカラスとの出会いは2020年7月19日、私の妻

右かもしれない

女の横顔。どこか見覚えのある。待てよ。何度か食事もご一緒したり、スナックのカラオケでデュエットまでした仲ではなかったか。ああ、人の心を深い悲しみに沈めてしまうステキなハスキーボイスのあのこでは。だったら、どうして、人っ子

意味不明が訪ねてきた

<Ⅰ>    メールが入ってきた。契約がしたい、そう言ってきている。だが、その物件の所有者が明記されていないばかりか、依頼者も不明だった。  こんな契約の申し込みなんてほっておいていいのだろうが、なぜかMにはな

芦屋ビーチクラブ その92

 今年最後の日曜日、朝八時の芦屋浜。  もちろん、言うまでもなく、芦屋ビーチクラブも今年最後の芦屋浜清掃作業の日。  今年、私は浜の南側を東西に走る堤防付近に生えている雑草を抜き続け、また、その周辺に落ちているゴミを拾っ

淋しい朝はスズメたちと話でもしよう。

 昨夜は会社の忘年会。JR芦屋近辺にある竹園で神戸牛のステーキのフルコースを食べた。妻を喪って十一年余り、初めて夕食のフルコースを食べたのだった。普段飲み歩いても、それほど食欲はなく、飲酒中心の遊びだった。だから、もう一

夜に出てくる人

孤独でいいじゃないか 世間に すり寄っても 世間は あなたの慰めにもなりはしない いざとなったら 離れていく   孤独って とてもいいじゃないか 愛しあったあの人のまぼろしを 今夜も 酒を飲みながら いっぱい 

まぼろしを浮かべ

はい 今夜も こうして 阪神芦屋駅周辺を うろついて 酒飲んで 生きてます   学校のお勉強なんて大嫌いだった 劣等生の おバカさんはおバカさんなりに   なぜかしら 体には恵まれて 病気にはずっと縁

オヤスミ

私 歳を取ってしまった。 まだ体はどうということはないが、 耳だ。 特に左の耳が聞きづらい。 いつも聴こえたふりをしているが、 ほんとは 相手が何を言っているのか、 意味不明の時が多々ある。   壁 …… &n

永井ますみの詩集「おのれ生え」を読む。

 きのう、このブログでご紹介した詩集「風船島奇譚」と同じ著者が、同じ発行日に出したもう一冊の詩集を読んでみた。    詩集「おのれ生え」 永井ますみ著 さいけい舎 2025年11月30日発行    こ

永井ますみの詩集「風船島奇譚」を読む。

 永井ますみさんから新詩集を送っていただいた。    詩集「風船島奇譚」 永井ますみ著 さいけい舎 2025年11月30日初版    この詩集は四十篇の作品で構成されている。  さまざまな内容の作品が

忘れちゃった ちょっと待って

私 何を見ようとしていたのか   自分 またかい   私 そんな冷たいまなざしで 馬鹿にしやがって   自分 怒りっぽいのが 癖なんだ    もっと冷静になって 頭の隅々まで探してみな  &

毎日 つぶやいている

愛している人は   朝の光に 浮かんで   闇の中へ 沈んでゆく    とわ に です   それが 愛だった   でも 思い残すことはない もはや   毎日 流

手首の気配

M タナカさんですよね。   それじゃあ、タナカさん、私の会社とあなたの会社とひとつにして、いっしょに明日から頑張ってやろう、結論はそれでいいんですね。   だったら、あとはお任せします。   タナカ ああ、そ

さとう三千魚の詩集「花たちへ」を読む。

 さとう三千魚さんからこんな「作品集」を送っていただいた。    「花たちへ」 さとう三千魚著 浜風文庫 2025年11月29日初版第一刷    なぜあえて「作品集」と表現したかというと、この本には副

ジャン・ロランの「フォカス氏」を読む。

 先日この著者の短編集「仮面物語集」を読んで、その読書感想文をブログに投稿した。今回は同じ著者のこんな長編小説を読んだ。    「フォカス氏」 ジャン・ロラン著 篠田知和基訳 月刊ペン社 昭和56年11月10日

皮と毛だけ

確かに、見渡せば、歳月とともに、すべてが流れ去っていく。 昔の哲人が言った通りだ。   だったら、すべては砂だろうか。流砂っていうだろ。そんな馬鹿な。違う違う。水か、それとも、少なくとも水のようなものじゃないだ

芦屋ビーチクラブ その91

 余程疲れていたのだろう。昨夜八時半ごろベッドに横たわり、目覚めた時には六時半を少し過ぎていた。  きょうは、どうしても芦屋ビーチクラブの活動に参加したかった。先週は午前中、文学の会があり、芦屋浜へ足を運ぶことは出来なか

不在……亀のいない朝……

 池の中をのぞいていた。  この小さな池の中で、今年の三月下旬からつい先日、十二月の初めまで亀が暮らしていた。そして、毎週土曜日の午前中、池を掃除して、ふたりで遊んだ。  私にとって、亡妻とのつながりがある、ただひとりの

後藤光治個人詩誌「アビラ」24号を読む。

 後藤光治さんから詩誌が送られてきた。    続・抒情詩篇(「アビラ」24号) 編集発行/後藤光治 2025年12月1日発行    この詩誌は「アビラ」22号の抒情詩篇の続編だった。表紙と裏表紙の帯の

音がしないゴルフ場

 いったい何人でゴルフをラウンドしているのか、皆目見当もつかなかった。山岳コースだった。山頂伝いにゴルフコースは直進を続けた。左右両サイドは断崖絶壁。狭いフェアウェイに差し掛かったら幅二メートルくらいで両サイドにラフはな

詩誌「交野が原」第99号を読む。

 金堀則夫さんから詩誌が送られてきた。    「交野が原」第99号 編集・発行人/金堀則夫 発行所/交野が原発行所 2025年8月10日    すべての作品を読んで、私の好みではあるのだろうが、野崎有

「千葉県詩集」第58集を読む。

 振り返ってみれば、三年前に「芦屋芸術」でお付き合いしている藤井章子さんから「千葉県詩集」第55集を送っていただき、その読書感想文を私は「芦屋芸術」のブログに投稿した。  このブログを読まれていた千葉県にお住いの詩人宮武

亀と冬眠

 きょうは土曜日。通常なら亀の池を掃除している。でも、このところ、寒さが厳しくなり、また、亀もご飯を食べなくなって水の中でじっとしている。  私はバケツに腐葉土を入れ、亀を池から出し、甲羅をスポンジで洗った。オヤスミ。そ

後がない

どうぞ お願い   前を向いて 歩いて 後に退がっちゃ だめ   ずっと ずっとよ このまま   あたしのこと ずっと このまま ずっと 忘れて   オリコウさん 前だけ見て 歩い

詩誌「現代詩神戸」291号を読む。

 永井ますみさんから詩誌が送られてきた。    「現代詩神戸」291号 編集/今猿人・神仙寺妙・永井ますみ 2025年12月10日発行    今号は二十人の執筆者が二十八篇の詩作品を発表、一篇の書評、

孤独者の夜

みんな笑顔で迎えてくれる でも けっして 夢ではない 周りには 知らない人もいっぱいいるが いまのところ なんのトラブルも発生していない   ただ 少し残念なのは 笑顔から 声が出ない 笑い声が聞こえない まし

寄稿文芸誌「KAIGA」No.130を読む。

 原口健次さんからこんな詩誌が送られてきた。    寄稿文芸誌「KAIGA」No.130 編集発行人/原口健次 発行所/グループ絵画 2025年11月30日発行    四人の執筆者が十篇の詩作品を発表

ジャン・ロランの「仮面物語集」を読む。

 鏡の中に別の世界が始まっている。そうじゃないだろうか。ニンゲン、独りでいると、そんな気分になったり、果ては鏡の中に奇妙な妄想を映し出したりしないだろうか。  そんな作品集を読んでみた。    「仮面物語集」