なぜ出てくるのだ。今頃になって。なぜ?
すると、ナーゼ、そんな反響音がした。
こんな狭い部屋で、こだまか。バカにしやがって。お話にもなりゃせん。こん畜生め!
すると、チクーショー、チクチク。こんなこだまが返って来た。
ひとり言なんて、しないことさ。天井や壁、床の奴らまでカラカッテヤガル。
すると、カラッカー、チヤガール。俺を呼んでいるのか。チヤガールって、呼びやがって。
だったら、もう一度、彼女に会いたい。
すると、彼の脳天に彼女の顔が大写しになった。ひとり言を止めた。もう午後一時を少し過ぎていた。腕組みをほどいて、蒲団に寝転がった。
ドッスン バッチン
すると、なにもかも、消えてしまった、彼女の顔も。
真夏の真昼だ。狭い天井でも、目をつぶれば、体は太陽と青空に包まれている。