芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

ピエエル・ルイスの「ビリチスの歌」を読む。

 つい先日、「アフロディテ」という作品を読んで十月末にブログに読書感想文を投稿したが、このたび、同じ著者のこんな作品を読んだ。

 

 「ビリチスの歌」 ピエエル・ルイス 鈴木信太郎訳 講談社 1994年6月10日第一刷

 

 著者は二十六歳の時に長編小説「アフロディテ」を発表しているが、長編詩篇「ビリチスの歌」はそれを先立つ二十四歳の時、一八九四年に発表している。フランス一九世紀の世紀末を代表する特異な作品だろう。両作とも、エロスの美神をこの世に出現させんとする著者のすさまじい意志を読者は覚えるに違いあるまい。いずれの作品も、終幕では挫折感を漂わせているのだが。

 さて、この作品はビリチスという女流詩人が自らの少女時代の一途な恋物語から、晩年、おそらく四十歳になるかならないかの遊女生活を回想し、そして死を予期した墓碑銘三篇に至るまでを精妙に構成して唄い残した作品だった。

 とりわけ、晩年、さまざまな遊女たちを唄った詩篇には、目を見張るものがある。華麗に、ときには、もの悲しく、どん底の絶望をにじみ出しながら。二十四歳の男が描いた作品だとはとても信じがたい筆運びだった。

 墓碑銘の一行をあげて、この文を閉じる。

 

 「愛せられても 愛さぬが 君の宿命(さだめ)となるやうに」(本書317頁第四連1~2行目)

 エロスの美神のつぶやきだろうか。