芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

芦屋ビーチクラブ その43

 きょうは日曜日。朝八時から芦屋ビーチクラブ。比較的ゴミは少なく、清掃作業ははかどった。  それはともかく、今日は特別な日。リーダーの中村さんの家で作業終了後、有志で九時過ぎからバーベキュー。余りの暑さに、上半身裸になっ

ベガの南東に

波が見える あなたはお椀の小舟に乗って 揺れる この世の海から 水平線を離れ 椀が浮かぶ 夏の夜空へ ベガの南東に

池で遊ぶ亀

 昨夜、阪神芦屋駅界隈を飲み歩かなかったため、未明二時過ぎに起床。「閉門」という題の詩と絵を一篇、芦屋芸術のブログに投稿。そのあと、読書などをして時を過ごす。六時から家事や朝食を終え、庭掃除とカラス夫婦、スズメたちに朝食

閉門

 ずっと門を開いていた。さまざまなものが出たり入ったりした。人ばかりではなかった。猫や犬、カやハエやゴキブリまで、出たり入ったりしていた。そんな明け暮れを彼は「人生」と呼んでいた。  しかし、出て行ったきり、二度と帰って

あい色の画面に黒い木がならんでいる。夜景を描いているのだろう。もう昼近いのに、頭の中は夜だった。

そんな気持ち

 懐かしい道がある。それぞれの人の思い出の中で、それは一本の道かもしれないし、あるいはまた、複数かもしれない。  もう二十一年も前の話だ。そこは高台になっていて、まだ新しい公園で植えられたばかりの低い樹木越しに海が見える

チリメンジャコ

「もう終わったのよ。しっかりして。」 そんな声がして 未明に目覚めた ここは 肉も実もない 骨だけで構成された物体が遊ぶ宴会場 二百畳くらいの日本間で小さな舞台もついている あやつり糸もないのに 百体くらいの物体が踊りは

お湯が沸くまで

 次元によって変わるのだろうか。それならば、彼もまたさまざまな次元に存在していて、その次元ごとに与えられた運命があり、さまざまな次元、さまざまな生命体、あるいはさまざまな物体、例えば石になってみたり鞭になって牛馬や人を打

両手切断

 まだ生きている、彼はそう思った。彼女を喪って十年が過ぎていた。爆発物取締法違反容疑。罪名はいくらでもやって来た。恐喝未遂罪。パワーハラスメント。無根拠誹謗罪。男女差別容疑。同性愛拒否侮辱罪。反対運動酸化剤、いや違った、

闇は闇のままで

「わたし殺せなかった」  この言葉が、いつまでも鮮明に刻まれている。  彼はそれ以上の詳細を彼女に尋ねなかった。もうどうでもよかった。今になってみれば、あの時、最も可能性のあった犯人は、おそらくあいつだった。しかし、それ

亀と洗い場

 昨夜、いつものスナックで飲んで、帰宅したのは本日午前零時半。そのままベッドに朝まで横たわっていた。  きょうはやらねばならないことがあった。家事や朝食を済ませ、庭掃除、カラス夫婦とスズメたちのお食事。また連日の猛暑のた

闇と愛

 意外と早いのかもしれない。彼は両てのひらを見つめながら、椅子に座り、じっとうつむいていた。死刑がやって来るのは。  留置場に二十三日間の拘留。その間、脳裏にさまざまな顔が現れる。さまざまな。しかし、彼女は現れなかった。

犯人

 誰が仕組んだ罠か。思い当たる筋をたずねてみた。あらゆる可能性のある道筋をたどってみるのだった。  こちらの細道から行けば、崖から転落する。だから、これではなかった。それじゃあ、この道だろうか。この道だと、国道四十三号線

真昼のひとり言

なぜ出てくるのだ。今頃になって。なぜ? すると、ナーゼ、そんな反響音がした。 こんな狭い部屋で、こだまか。バカにしやがって。お話にもなりゃせん。こん畜生め! すると、チクーショー、チクチク。こんなこだまが返って来た。 ひ

砂戦争

 何が鳴っているのだろう。よくわからなかった。川の流れる音がしているが、この辺りにそんなものがあるはずはなかった。荒地のはずだった。それじゃあ、地下水でも流れているのか。長年この家に住んでいるが、そんな噂はついぞなかった

抹消登録

<Ⅰ>  何か手違いがあったようだ。契約上の問題で、彼も関係した以上、無視するわけにはいかなかった。  特殊な請負契約上のトラブルだった。元請A社の全ての賠償責任をB社が担保する契約だった。この「全て」という文言が、B社

芦屋ビーチクラブ その42

 きょうは午前三時前に起きて、「天井で音がする」という詩と挿絵を作りブログに投稿。そのあと、ネットでニュースをパラパラと確認。恵贈していただいた故冨永滋氏の死後出版詩集「未完の愛の詩集」を読了。いずれ再読してブログに感想

天井で音がする

くるくる している くるくる 音がしている   くる狂る 狂るくる 狂るくる くる狂る   来る日も 来る日も 狂る狂る 苦る苦る   けれど また 今夜   頭の中が ひっくり返

それでも私は亀と遊ぶ

 連夜飲み歩き、午前零時過ぎの帰宅の為、朝遅く六時半の起床。歯磨きから始まり家事全般をつつがなく終える。きょうもまた庭掃除、カラス夫婦とスズメ四十羽、いや、五十羽はいるかもしれない、彼等の朝ごはん。連日の強烈な日照りを思

レーモン・ルーセルの「アフリカの印象」を読む。

 今年の四月に同じ著者の「ロクス・ソルス」を読んだが、このたびは、この作品を読んだ。    「アフリカの印象」 レーモン・ルーセル著 岡谷公二訳 平凡社 2019年6月10日初版第2刷    この作品

使者

<Ⅰ>  言うまでもなく彼は憔悴していた。使者に任命されたのは確かだった。眠っているとき、編み笠を被った得体のしれない人間が彼の右肩の側に立ち、赤い封筒を枕元に置いた。「あの女に届けよ」。低い乾いた声。命令が下され、しば

芦屋ビーチクラブ その41

 暑い。とにかく暑い。朝八時から芦屋浜の清掃作業に参加。もう三十度を少し超えているのかもしれない。  昨夜は芦屋浜の花火大会。去年は花火大会の翌日の朝、主催者側のボランティアの方が何人か清掃作業に参加されていた記憶がある

紫と吸盤

花が咲いていた 吸盤の   確かに花びらも 茎も キキョウに似ていたが   根が 吸盤だった   惑星 いちめん この花に覆われていた   キキョウのような花に 蛸のような吸盤の足

亀とセミの声

 昨夜、友人から声がかかり、なじみのスナック「リーザ」で飲んで、帰宅したのは午前零時を過ぎていた。  朝遅く六時に起床。家事や朝食、庭掃除。カラスご夫婦とスズメたちに朝ごはん。すべてを済ませて、八時半ごろから毎週土曜日に

走る孤独

奥深く生きている間に 出れなくなってしまった   もう日の光を仰ぐこともあるまい 奥へ 裏側の深淵へ   おのずから潜中走法を学んだ 潜ったまま走り続けた   かつて地球上で見た存在物は皆無

寄稿文芸誌「KAIGA」126号を読む。

 原口健次さんから詩誌が送られてきた。    寄稿文芸誌「KAIGA」126号 編集発行人 原口健次/発行所 グループ絵画 2024年7月31日発行    四人の詩人が併せて十篇の作品を発表している。

酒を飲む胴体

愛しあわなければ ひとりの夜   カーテンは開いているが 耳は閉じていく   あなたの唇がこんなにも懐かしいのに 人差指も 親指も見えない   首が落ちてゆく夢 今夜も 胴体だけで酒を飲んで

詩誌「リヴィエール」195号を読む。

 永井ますみさんから詩誌が送られてきた。    詩誌「リヴィエール」195号 発行所/正岡洋夫 2024年7月15日発行    十二人の詩人の十三篇、表紙裏の作品を加えると十四篇の詩で構成されている。

詩誌「布」40号を読む。

 先田督裕さんが主宰するこの詩誌を読んだ。    詩誌「布」40号 2023年9月20日発行    六人の同人が七篇の詩を発表している。また、<ひとこと>の欄では、決して<ひとこと>ではなく、同人全員

詩誌「タルタ63号」を読む。

 先田督祐さんからこんな詩誌が送られてきた。    詩誌「タルタ63号」 編集 寺田美由記/田中裕子 2024年7月1日発行    九人の詩人が十六篇の詩を発表している。また、エッセイでは、堀内敦子氏

亀と余談

 きのうはワイフの十年目の命日で、通夜や葬式から始まって特段法事などやっていない私は、仕事を休み、一日中ワインを飲んでいた。ワイフの骨壺ばかりではなかった。愛犬ジャック、愛猫アニーの骨壺もワイフの両サイドにまだ立っている

あの人が去ってゆく夏

 午後一時前、家を後にした。真夏日の芦屋浜にはほとんど人気はなかった。  東岸の堤防の階段に座って若い男が上半身裸で日光浴をしている。顔も体も日焼けして焦げ茶色になっている。西端の浜辺の水際を黒いTシャツを着た若者が歩い

炎天下に書く

 午後零時。もっとも影が短くなる時間に、炎天下を歩く。  十年前のこの日、私は終日、緩和ケア病棟にいた。あなたは既に死の中に住んでいた。  なすすべはなかった。いまもなすすべもなく、ただ炎天下を歩いているだけだった。 &

夏を歩く

 きょうも炎天下の真昼、芦屋浜から総合公園を歩いた。  芦屋浜では数名の人と出会った。堤防沿いに私は西に向かっているのだが、前方から東に向かう女性がいた。おそらく汗だくだろう。伏し目がちな額に汗がにじんでいる。おかっぱみ

三日後の未明まで

 七月十六日。  真夏日の炎天下。お昼前に家を出る。いつものように芦屋浜から総合公園をさまよい歩く。  半ば狂っているのか。自分で言うのもなんだが、もうほとんど治癒不能状態なのかもしれなかった。少なくとも、既に常識は崩壊

転生

  〈Ⅰ〉  庭にカラスが遊びに来るようになった。  おとなしく垣根にとまったまま、彼を見つめている。「カアカア」、彼はそう呼びかけてみた。恥ずかしそうにうつむいているかと思うと、また、チョコンと顔をあげてうれしそうに彼

泥酔と恋心

 カウンターに座って彼はしばらく眠っていたのかもしれない。……    ……女が横たわっている、彼のベッドの上で。  酔っぱらっているのか、家を間違って、こんなところで。  そういえば  十年前に亡くなった妻は

芦屋ビーチクラブ その40

 久しぶりにビーチクラブに参加した。六月二日以来。雨が多くて中止の日が続き、また、私自身「芦屋芸術」のお付き合いが増え、不参加する日もあった。  浜には漂着物がいっぱい。それに雨で湿っているため、とても重く、運搬するのが

亀と亀の子タワシ

 昨夜、時折訪れるスナックから帰宅すると、午前零時前。もう、ほとんどきょう。朝六時に起床。  やる予定にしている事がたくさん。まず、家事と朝食。庭掃除とスズメたち、カラス、けさは女ガラスがひとり、彼等に朝ごはん。そのあと

再現

梅雨の終わりが近づいていたが 未明 激しい雨が軒を叩いていた ベッドに寝転んでいる両耳を 雨音が ボトボトバンバン 演奏する でも頭の中はお天気ね すっかり晴れ渡って 雲ひとつなく 満天 星が輝いているわ あなた いまは

松川紀代の詩集「頬、杖」を読む。

 静かに、平明な語り口の短詩三十四篇で構成された詩集だった。    「頬、杖」 松川紀代著 思潮社 2024年6月25日発行    子供のころのさまざまな回想、老いた現在の雑感、親族の思い出、また、夢

金堀則夫の詩集「ひの石まつり」を読む。

 詩誌「交野が原」を主宰している金堀則夫さんから詩集を戴いた。    「ひの石まつり」 金堀則夫著 思潮社 2020年4月1日発行    独特の霊的世界を言語で築き上げた一冊だった。著者の住まう星田と

正座するのが遅かった

昨夜も 飲み歩いてしまった 歯止めが利かなくなっていた このままでは 近いうちに 破綻すると思った 久しぶりに 畳の上に正座した 両足が痺れて来た それでも 座り続けた おのれに鞭を打ち続けた おい おまえは もう破綻し

黒くなる

てのひらと てのひらをあわせたら 人はそれを合掌と呼ぶのだろう   しかし けっして 結んではならない 悪に染まる かならず   黒くなる

ひとつの別れ

この頭から 言葉が消えてゆく なすすべもなく 消えてゆく   それもさよならのひとつだ   だけど 空間が沈んでいるところに 消えた言葉が浮かんでいる そんな別れもあった

無数

 あの頃、手が何本あったのか、思い出せなかった。腕組みをして、昼下がりから夕暮れまで、窓辺に座って、空を見上げていた。やがて夜が来た。    空には無数の手があるのがわかった。星が無数にあるように。

亀、門前で遊ぶ。

 昨夜、友人と居酒屋からいつものスナックへと流れ、帰宅したのは午前零時を過ぎていた。  朝七時ごろまで寝過ごしてしまい、家事や朝食を済ませ、カラス夫婦や何十羽も集って来るスズメたちにご飯を差し上げて、庭掃除。また、梅雨と

水音かな 足音かな

水の音かな ぽとりん なにかが はずれようとしていた ぬっすん いや 足音だ ぽっちん やはり はずれたのか すっかり はずれてしまったのか でも 水音かもしれないし ぽとみん つんつん むっちん つっつん オイ そんな