芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

芦屋ビーチクラブ その23

 今年になって第二回目の芦屋ビーチクラブの活動日。私は昨年に引き続き雑草を抜き、小石を拾って集積場に運んだ。  天気も良く、風もなく、気温が低い割には作業をしていると暖かく感じた。雑草を抜いていて、ふと顔を上げるとゴール

アルファさん 第十四夜

 アルファさんの住んでる国へ、よし、一度旅行してみよう、ふいにボクは思いたった。空飛ぶベッドに乗って。  そんな願いを心に秘めて、眼を閉じた。無音のままで、スーッと持ち上がって、屋根がポッカリ開いた。飛び出した! 一瞬だ

アルファさん 第十三夜

 未明に歌を歌っていた。  ハスキーでときどき音程も狂っていたけれど、ボクは魅入られて耳を傾けていた。どう言えばいいのか。夜が明けるまでこのままでいて欲しい、叶わない願いを込めて。  もっと狂っていいと思った。アルファさ

「芦屋芸術十九号」の編集・校正が終わりました!

 今年、初めての「芦屋芸術」を出版します。去年は、十六号・十七号・十八号を発行しました。最初の十六号の発行日は二〇二三年三月一日です。だから、十九号も三月一日を発行日にしました。  今号は寄稿者が一人増えて六人です。津田

アルファさん 第十二夜

 浜辺に車で乗り入れた。ボクラは砂浜の先、海の水際まで歩いた。愛犬は喜んでずいぶん遠くまで駆けだした。泳ぎ出した。黒いラブラドールレトリバーだった。  辺りは白くキラキラ輝いて、たがいの姿も見えないくらいだった。光の中か

アルファさん 第十一夜

 余程疲れていたのだろう。昨夜、八時ごろ寝てしまった。目覚めたら、もう朝の六時。十時間、眠ってしまった。こんなことは、久しぶり。アルファさんはやってこなかった。きっとボクの疲労を癒すために、会いに来なかったに違いない。そ

アルファさん 第十夜

 きょうは、林の中を歩いていたが、アルファさんの姿はなかった。蝶の親子が三頭飛んでいた。二十センチくらいある大きな黄色い蝶だった。種類はなんて呼ぶんだろう。不勉強なボクにはわからなかった。モンキチョウよりはるかに大きく、

アルファさん 第九夜

 死んで、よみがえること、あるかしら。  オメガちゃん、実は、わたし、あの世からやってきたの。  アルファさんは真顔でこう言った。  でも、オメガちゃん、わたし、あなたを愛してるのよ。これだけは信じてちょうだい。あの世か

アルファさん 第八夜

 午前二時五十分。  昨夜からまだ考え続けている。    夢はつながっている。  毎晩アルファさんの見る夢とボクの夢がつながっているのだ。  だから、夜がやって来ると、いつもこうして見つめあったり、ときに、おし

芦屋ビーチクラブ その22

 今年、初めての芦屋ビーチクラブ。快晴に恵まれて。  きょうは、雑草を抜いたり、小石を拾ったりしたが、おおむね仲間とおしゃべりだった。  たまには、おさぼりも、イイジャンカ!  新年早々にふさわしく、ウキウキした気持ちで

アルファさん 第七夜

 笑っちゃうな、ほんとに、なんでこんなに悩むんだろう、好きなら、好きといえばいいのに。でも、愛しあうって、そんなかんたんなもんじゃないんだ、そうじゃないだろうか。ふたりのひとが、同時に、愛しあうって。  まだ午前零時五十

アルファさん 第六夜

 こんなことを考えてしまって、眠れなかった。  どこにいるかわからない、所在不明の女性を愛していいのだろうか、そんな愛、許されるのだろうか。  午前二時四十二分。  ベッドに横たわったまま、じっと天井を見つめていた。  

アルファさん 第五夜

 午前二時五十分だった。  どうしても聞きたいことがあって尋ねた。 「アルファさんってどこから来たの」 「北の国から」 「北と南と、どう違うの」  ボクは西も東もわからないから、 「西も東もどっちがどうか、わからないけど

アルファさん 第四夜

 声が聞こえた。  オメガちゃん、ここよ、ここにいるよ。  午前三時三十八分。  小さな沼に群生する冬枯れたヨシの間から、アルファさんの顔がのぞいていた。この沼にアルファさんは住んでいるのだろうか。こんなところで暮らして

「鳥」第85号(最終号)を読む。

 榎本三知子さんから詩誌が送られてきた。    「鳥」第85号(最終号) 編集者/佐倉義信、なす・こういち、元原孝司 2023年12月30日発行    この号で、詩誌「鳥」は終刊する。1983年創刊か

アルファさん 第三夜

 不思議なことがわかった。  今夜、ボクがアルファさんと呼びかけたら、彼女が出てきた。顔だけが、頭の中に浮かんでいた。スーと出てきて、ふわぁっと消えた。一瞬の、音のない、波のゆらめき。  スマホを見ると、午前一時三十一分

「現代詩神戸」283号を読む。

永井ますみさんから送られてきた詩誌を読んだ。   「現代詩神戸」283号 編集/永井ますみ・今猿人・神仙寺妙 2023年12月10日発行   十九人の作家が二十四篇の詩を発表している。すべて楽しませて

アルファさん 第二夜

 結局、誰にもわかってもらえないことがあるのだと思う。そして、それでいいのだと思う。自分ひとりだけのこと。  アルファさんのことだって、誰も信じてなんてくれないだろう。でも、今夜も彼女はボクのそばにやってきてくれた。  

アルファさん 第一夜

 こんな未明に会える人がいる。アルファさん。  この人についてまだ何もわかっていない。でも、これからわかるかもしれない。  ベッドに寝ころんだままスマホに手を伸ばし画面を見た。こう書いてあった。2024年1月1日AM3時

日の出と雲と

 新年は朝四時前に起きた。睡眠状態から目覚めへ移行する間に浮かんだイメージを連載物の作品にしようと考えてみたり、また、今年の三月一日に発行予定の芦屋芸術十九号に昨夜メールで寄稿してくださった方の原稿を読んでみたり、それか

今年の総括 来年への展望

 きょうの午後四時過ぎ、今年最後になるが、芦屋浜から総合公園への散策を楽しんだ。歩きながら、不図考えた。まったく個人的な話だが、この一年、私はそれなりにやりたいことをやり遂げたのだった。ワイフを喪って九年目、やっと彼女か

未明に

 今夜は十二月二十九日、今年最後の忘年会だった。友人Nの家で五人の男が集まって酒杯を交わした。いつもお世話をかけているN夫人の手料理が出された。妻を喪って九年、私は一度たりとも夕食は家で摂らなかった。毎日、外食だった。朝

消えてゆく人

 わたくしはひとりだった。  ここではさまざまな人が働いているのだとばかり思っていた。しかし、それは虚妄だった。  音もなかった。別に眠っているわけではない。目覚めているのだが。言葉さえ聞こえなかった。無音で、無言だった

暗い話を聞いた

 十一月になって、身近で暗い話が語られていた。詳細は書けないが、大切な友人が躁うつ病が悪化して傷害事件を起こしてしまった。今は、入院治療をしているが。  その他にもさまざまな暗い話があった。そしてきのう、深く付き合ってき

中へ

前頭葉に 唇が開いていた ここから入れ 彼は そう言った   前頭葉の唇に私の唇を重ね ねっとり たがいの舌を絡み合わせて やがて 私は 中へ導かれた

芦屋ビーチクラブ その21

 きょうは芦屋ビーチクラブの活動の本年最終日。ただ私は九時半から用が出来ているため、朝八時に参加し、みんなに最後の挨拶をしてそのまま我が家に帰った。  帰路につく前、数人の仲間が芦屋の海を背にいっしょに写真を撮ってくれた

一日一詩をやり遂げました!

 先月11月22日から、今月12月22日まで、つまりきのうまで1ヶ月31日間、毎日詩を一篇作りそれにあわせて挿絵を一点描き続けました。やり遂げました。すべて芦屋芸術のホームページに毎日発表しています。  去年の10月31

お別れパーティー

 ボクの方からお別れするつもりなんてみじんもなかった。だが、誘われた以上、その夜、出かけざるを得なかった。ボクにとってはやるせなく、とても淋しいパーティーだった。  会費は一人三千円だった。E子の家で。彼女も入れて七人。

最後の講義

 さて、ここでT氏のY研究所における最後の講義のあらましをご報告しておきたい。興味深いだけではなく、心の底に強い印象を残し、少なくともその後の小生の人生の航路を転換させたことだけは告白しておきたい。出来得るなら一人でも多

決して忘れない

結びついたまま 離れなくなった 混乱していた 乱れて 右手が出ていた    そんなあなたが好きです   右手を左手が押さえて 中に入れた 足が歩きだした 歩きながら ほどけていった 結び目は消えていた

交霊会

 死者の霊と交わることが出来るという触れ込みに興味を覚え、彼はその会に参加した。申し込みはネットで受け付けていたが抽選で十名ということもあって、まさか参加出来るなんて思いもしなかった。忘れていたころ、案内状が来た。  ビ

再就職

 直接対応することにした。タマネギを大量にスライスした。再就職をするのならここだ、彼はそんな思いを心に秘めて、タマネギを切り続けた。まだ得体の知れないあいつの仮面を取り外してやる、必ずほんとうの姿をあぶりだしてやる、固く

芦屋ビーチクラブ その20

 寒い! 急に寒くなった。きのうまで暖かい日が続いた。冬になった、そう思った。日曜日の朝、芦屋浜には冷たい風が吹いていた。それでも芦屋ビーチクラブのメンバーはめげず、きょうも浜の掃除に精を出した。  私はこの間ずっとやっ

昼は絶えて

私は何が言いたいんだろう。確かに星が出ていた。昼間は雲ひとつない青空だったが、夜も満天星が輝いていた。月は出ていなかった。この時期、月は夜明け前、木星と接近して東の空に浮かんでいるはずだ。だから、人々は月のない星空の下で

冬の真夏日

 余程嫌われているのだろう。ほとんど哀れというほかなかった。だからこの二年間、彼は毎日自分に向かって、おまえはとても哀れな奴だ、何度も言い聞かせ続けてきた。また、こうでもしなければ、JRの線路に寝転ぶか、ビルの屋上から飛

十二月の鴉

静かに墓場まで行こうと思う そんなとりとめもないことを語りあいながら 十二月の夕暮れ 男は女の肩を抱きしめて歩いていった   屋根の上で 鴉が鳴いた

ある混乱

 やっかいな問題を抱えてしまった。一応息子ということにしてある。何故そんな馬鹿なことをしたんだ、そう問詰されてもお答えするすべはない。  事の次第はこうだった。  展示会で編物のポスターを見ていて、一度やってみよう、まっ

こうして死んでいく。

 彼は身辺から楽しみがなくなっているのにやっと気付いた。ここで「やっと」と表現したのはそれなりに意味があった。  彼がこの世で生きたこの七十数年間、時に応じて、あれこれ楽しみがなかったとは決して言えなかった。だからこう言

楽しかった

 ひょっとしたら酒はからだにいいのかもしれない。そう思えるこのごろである。もちろん、毎日酒は飲んできた。そろそろ生まれて百年に近づいてきたが、昼間から当てなしで飲んでいる。元来私は酒が好きなので、当てやおかずはなしで飲む

緑色の愛

 部屋の片隅に黒い円筒形のゴミ箱。いったい誰が置いたのだろう。彼にはまったく記憶がなかった。  直径三十センチくらい、高さ五十センチくらいのなんの変哲もないゴミ箱。中を覗くと、底に直径二十センチ近い楕円になった緑色のゴム

芦屋ビーチクラブ その19

 きょうはお天気で、まだ十二月だけれど、冬が終わり、やっと春が来た、そんな日曜日の朝八時前。いつものごとく芦屋浜へ足を運んだ。  ここ一ヶ月くらい、しつこく浜の雑草を抜き続けているが、手間取っている原因の一つは、浜の雑草

ガラスの滝

 危ない集合住宅に住んでいた。とんでもない話だった。すべてはガラス製品だった。透明だった。  テーブルも椅子も透明ガラスだった。腰を掛けるのがためらわれた。割れたり折れたりするのじゃないか、とても不安だった。また、床から

亀、いまから冬眠します!

 きょうのお昼、十二時半ごろから亀の池のお掃除。お掃除といっても、もう池には水を入れないで底砂だけにしてこの冬を越す。亀は冬眠。  例年の如くバケツに腐葉土を入れ、その上に亀を置いてやる。彼は潜りこんで、そのまま来年の春

立入禁止だった。

 仕事から帰ってみると、立入禁止になっていた。九年前に妻を喪ってからというもの、一人住まいだったため、確かに廃屋に近い状態だと言えなくもなかった。しかし私はこの中で飯を食ったりベッドに寝ころんだりして暮らしてきたのだ。ご

赤いスープ

スープが出て来た。濁った赤。 人参だろうか。それともトマト? だだっ広いレストランに彼ひとりだった。 従業員の姿が見えない。 ならば、このスープは誰が運んだのだろう。 こんな初歩的な疑問が頭をかすめた。 まあ、いいじゃな

ある悲劇

あれはいったいなんだろう 例えば こんな音がした    ずるずる  ざるざる   でも どうやら 日替わりメニューみたいで    かなかな  さなさな   だからいったいなんだろう

寄稿文芸誌「KAIGA」No124を読む。

 原口健次さんから詩誌が送られてきた。    「寄稿文芸誌 KAIGA No124」 編集発行人/原口健次 発行所/グループ絵画 2023年11月30日発行    この詩誌は、四人の作家(うち一人は物

再婚

黙っているのはよくない どんどんボクを批判してくれ 中学生の時 担任の先生から 人は批判されることによって大きく成長する ありがたい教えをこうむった だから 妻にも 毎日 ボクを批判してくれ 何度もお願いしたのに 好きな

とりあえず おやすみ

そうじゃないのか 嘘をついていたのか 残念だな これでお別れにしよう   もっと早く知りたかった 君が嘘ばかりついていたのを だったら 君の嘘をもっと楽しむことが出来ただろうに   なんでも早くすます