芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

宙に浮かぶ魚

 二日前には人差指が宙に浮かんでいたが、きょうは魚が浮かんでいた。ダイニングテーブルの左端辺りから一メートルくらいの高さの空間だった。別に泳いでいるわけではなかった。魚の種類には疎い私でよくわからなかったが、背中が濃い灰色であちらこちらに焦げ目がついている。だから空間を泳ぐことが出来ないのだろう。

 グワァオウ! 喚き声が聞こえて左横を向くと、開いていたリビングのドアから真っ白な猫が跳びはねて焼き魚をくわえたまま、パソコンの中へ消えた。

 画面は午前三時五十分を刻んでいた。