芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

今年は、原爆文学を読んだ。

 今年は、といってもまだ一ヶ月近い時間を残してはいるのだが、読書に関して言えば、振り返ってみれば、所謂「原爆文学」を中心にした言語体験だった。今年の自分自身を総括する意味で、いったいどんな「原爆文学」を読んできたのか、煩を厭わず、一月から十一月まで読書順に列記してみたい。

 

 峠三吉 「原爆詩集」 岩波文庫

 原民喜 「夏の花・心願の国」 新潮文庫

 大田洋子 「屍の街・半人間」 講談社文芸文庫

 林京子 「祭りの場・ギヤマン ビードロ」 講談社文芸文庫

 井伏鱒二 「黒い雨」 新潮文庫

 栗原貞子 「栗原貞子詩集」 土曜美術社出版販売

 栗原貞子 「核・天皇・被爆者」 三一書房

 「さんげー原爆歌人正田篠枝の愛と孤独-」 編者広島文学資料保全の会 社会思想社

 正田篠枝 「ピカッ子ちゃん」 太平出版社

 竹西寛子 「管絃祭」 講談社文芸文庫

 亀沢深雪 「痛む八月」 風媒社

 亀沢深雪 「広島巡礼」 新地書房

 秋月辰一郎 「死の同心円―長崎被爆医師の記録」 長崎文献社

 福田須磨子 「われなお生きてあり」 ちくま書房

 後藤みな子 「樹滴」 深夜叢書社

 渡辺広士 「終末伝説」 新潮社

 福田須磨子 「原子野に生きる」 長崎の証言の会編 汐文社

 阿川弘之 「魔の遺産」 PHP文庫

 石田雅子 「雅子斃れず」 日本ブックエース

 松尾あつゆき 「原爆句抄」 編者平田周 書肆侃侃房

 佐多稲子 「樹影」 講談社文芸文庫

 永井隆 「長崎の鐘」 サンパウロ

 永井隆 「ロザリオの鎖」 サンパウロ

 永井隆 「この子を残して」 サンパウロ

 井上光晴 「地の群れ」 河出文庫

 松谷みよ子 「ふたりのイーダ」 講談社

 山口勇子 「荒れ地野ばら」 新日本出版社

 堀田善衛 「審判」 岩波書店

 井上ひさし 「父と暮らせば」 新潮文庫

 高橋和巳 「憂鬱なる党派」 河出文庫上・下

 井上雅博 「この空の下で」 朝日学生新聞社

 いいだもも 「アメリカの英雄」 河出書房新社

 山口勇子 「おこりじぞう」 新日本出版社

 大江健三郎 「ヒロシマ・ノート」 岩波新書

 大庭みな子 「浦島草」 講談社

 小田実 「HIROSHIMA」 講談社

 福田武彦 「死の島」 新潮文庫上・下

 蜂谷道彦 「ヒロシマ日記」 日本ブックエース

 金井利博 「核権力―ヒロシマの告発」 ほるぷ出版

 小倉豊文 「ヒロシマー絶後の記録」 日本ブックエース

 

 所謂「原爆文学」といっても、人類最大の狂気といっていい広島・長崎の出来事の闇を表現するのであってみれば、言うまでもなく、さまざまな角度、さまざまな言語表現が存在するのであって、今年読んだくらいの程度ではまだ事柄の真実を十分見据えていないのではあるが、例えば、大田洋子の作品だけを取り上げてもさらに読み進んでいかなければならないのは承知しているのだが、このあたりでとりあえず所謂「原爆文学」から離れ、やはり、人類最大の狂気といっていい「アウシュヴィッツの文学」の書を開くことにした。「原爆文学」を読んでいても、時折頭の中がカナヅチで破壊されたような時間がやって来ることもあった。アウシュヴィッツの文学を読んでいくのも、確かにツライ作業には違いないが、とにかく、ボクは、人間を物体視する極限の狂気の言語世界、このボクの中にもはっきり存在している他人を絶対否定する狂気を体験していくことになる。