芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

「彼女」第二章

 同じ屋根の下で暮らしたE子を喪ってもうすぐ十年になる。この十年間、私は女性と触れ合うことが出来なかった。腕を組んだり、肩を抱いて歩くことさえできなかった。おそらく四十三年間愛しあったE子の記憶が心の奥に住んでいて、他の