芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

カアカアじゃない、カアカアがやって来た!

 つい一月ほど前、五月十九日の朝、去年の十月中旬までしょっちゅう遊びに来ていた身体障害者のハシブトガラス、あれ以来ぷっつり姿を見せないあのカアカアがいつも止まっていたわが家のウッドフェンスに、一羽のカラスがいた。この日、十九日は亡妻「えっちゃん」の月命日なので、つい供養だと思い、去年十一月に永眠したアニーのキャットフードをちょっとアゲタラ、オシマイだった。そうだ、アゲタラ、オシマイ! これ以降、毎日やって来た!

 ボクは頭を抱え、ふたつのことを熟考した。……まず一つ目は、この子の名前をどうするか?……ヨシッ、この子はカアカアじゃないが、カアカアと呼ぼう。カアカアじゃないカアカア、そう呼ぼう、と。

 もう一つ。命にとってもっとも大切な欲望、もちろん食欲のことだが、それを痛切に求めるのは何も身体障害者のカアカアばかりじゃない。このカアカア、健常者のカアカアだって同じやんか。そうやんか。カアカアじゃないカアカアでも同じやん。そうちゃうか。これって崇高な欲望やん、そうやん、そうやんか、生命への讃歌やんか!

 あの日から毎日、ボクはカアカアじゃないカアカアにご飯をあげている。