芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

迷子の亀がやってきた!

 けさ七時ごろから池の掃除を始めた。だいぶ水が冷たくなっている。これからは日に日に冷たくなっていくのだろう。

 この日曜日の夕方、ご近所のご夫婦がワンちゃんと散歩している際、道路を歩いている亀を見つけた。顔を合わせばよくおしゃべりするご近所仲間で私が亀を長い間飼っていることも知っていて、「ヤマシタさん、こんな亀、いたよ」。

 さっそくスマホで写真を撮り、「亀の迷子です!」、そんな表題のビラを作った。近所の道路に立っている芦屋市の広報板のガラス戸を勝手に開け、虫ピンで張り付けた。ビラには「ここに連絡してください」という文章の下に私の住所と携帯番号が書いてある。芦屋市の承認は受けていない。バレたらおとがめがあるかもしれない。その時はその時でイイジャン、私はそう判断した。甲羅がトテモ綺麗な亀だったのでおそらく可愛がられていたに違いない。一日も早く飼い主に知らせたい、そんな気持ちが私の心を突き動かした。

 自治会長にもお願いをした。私たちの街区にある二カ所の掲示板に張り、また、回覧板で回してください、そんな申し出を会長は快く受け入れてくれた。近所づきあいって素敵じゃないか。

 そんなわけで、きょうのお掃除はいつになくにぎやかになった。

 我が家で三十三年生きている亀は冬になってもうほとんど動かないが、四日前にやってきた方は若くて、まだ生まれて三年前後ではないだろうか、庭中元気に走り回っている。一瞬たりと目が離せない。一度数秒目を離してしまい、忽然と消えている。あわてて家探しすると、植木鉢の裏側へ潜りこんでいた。