芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

亀、私に寄りそう。

 冬眠が近づいてきた。もう一か月余りすれば、来年の春まで亀は眠りにつく。

 朝七時過ぎから池の掃除をしたが、その間、庭を徘徊している亀の動きもかなり鈍くなっている。しゃがみこんで池を掃除している私の周辺をゆっくりお散歩。私を見あげることがしばしばだった。別れを惜しんでいるのか。

 掃除が終わった後、いつものようにしばらく亀と遊んでいた。綺麗に咲いたアメジストセージの前を彼はうれしそうな顔をして歩いていた。他のところでも書いているが、この花の名前は、「芦屋芸術十五号」やもうすぐ出版される「フォト詩集 親水公園にて」で水墨画の挿絵を描いている清位裕美から教えられた。八年前に妻を亡くし、愛しあったまま別れる苦しみというものを私はさんざん味わってきた。それでも、偶然この世で出会ったさまざまな命に助けられて何とかここまでやってこれたのだった。