芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

亀とケイ・ウンスク

 お盆の十五日ではあるが、昨夜もこの頃よく行っているスナック二軒を回った。  スナックで遊んだら、時折、カラオケで私は歌を唄う。例えば昨夜、一軒目では桂銀淑(ケイ・ウンスク)の「アモーレ/激しく愛して」を唄った。また、ス

それでも やはり

ワインを飲みながら それでも あの時 やはり そう つぶやいていた これが極限値か 赤ワインを見つめていた 白いくちびるが浮かんでいた   八月十五日

耳地獄

 行きたければ行けばいいだろう、そう言われた。間違いない。俺の耳にははっきり突き放すような言葉を投げかけた彼の声が残っている。後になれば誰も信じてくれないばかりか、当事者、彼自身がそんなことを言った記憶はないんだって。

つい また

ユリは悲しい 花瓶から いきなり ハラリ 散っていく 床に落ちた 花びら おしべ   もう買うのはやめよう ユリで部屋を飾るのはやめよう   でもお店で花の前に立っていると つい また ユリに手を出し

愛の終わり

 何度も確かめていた。だってここ数日、財布の中のお札が全部白紙に変わってしまうから。朝起きて、出勤する際、覗いてみたら全部白紙。タンス預金から差し替えて会社に出かけるが、こんなことを続けていたらもうすぐ貯金は尽きてしまう

愛の深さ

なんということだ どこまで つながっているのだ このやわらかい鎖は   紅 緑 紫 しずくの数珠になったつながり ほとり ほとり……

亀と帰宅

 奇遇というものがある。昨夜、二軒目のスナックで、旧知の人と会った。以前、近隣のボランティア活動で何度もご一緒していたが、その後、ある事情があってその活動から私は身を引いていた。マタ、ミンナデ、コノすなっくデ、遊ボウね。

冨永多津子歌集「みづおち」を読む。

 どうしても余分な話をしておきたい。周知のとおり、阿弥陀経で「倶会一処」という言葉が出て来るが、いまさら言うまでもなく、別れた人と浄土で再会できるというのであろう。この教えは、我が国の民衆が浄土系の宗教を信じてきた大切な

冨永滋句集「提外日記」を読む。

 私は俳句や和歌をあまり読まない。また、詠んでみようともほとんど思わない。「ほとんど」と言ったのは、かつて私の個人誌「芦屋芸術」に十代、二十代の時に書いた奇妙な?俳句を若干数発表しているのだから。  だから私はこの本のい

死の意味

離れられないほど 愛しあったために   ボクとあなたは ひとつのからだだった   死は ふたつに割った

未明に声がした

 動いているのは確かだった。指先はすべて問題なかった。一応手足も眺めわたして、大丈夫だよ、Mは微笑んだ。鏡も笑った。よかったね。  ふくらはぎも腰も震えてはいない。だが連日の猛暑の陽射しのせいだろうか、外部は真っ赤っか、

寄稿文芸誌「KAIGA」No.129を読む。

 原口健次さんから詩誌が送られてきた。    「KAIGA」No.129 編集発行人/原口健次 発行所/グループ絵画    この詩誌は四人の詩人が十一篇の詩を発表している。いつものように故人の詩人の二

芦屋ビーチクラブ その76

 昨夜は誰からも声がかからず、また、ひとりで夜の灯りをさまよう気にもならなかった。というのも、きょう、日曜日の昼過ぎから梅田で「別冊關學文藝第七十号」の合評会があり、その席に私は出かける予定だったから。何しろこの雑誌は3

亀と未明

 暑い。灼熱。焦熱地獄。午前九時過ぎ。庭掃除。スズメたちカラスたちのご飯。土曜日恒例の亀の池の掃除。  確かに異常天候。春も梅雨も短く。連日猛暑。朦朧として亀の池を洗い続けるボクという男。亀は庭で楽しく遊びまわっている。

あの時のメモ帳から

 彼の中で何かが壊れていた。それに気づいた時にはすでに手遅れだった。メモ帳にこんな言葉をイタズラ書きまでして。    消えていく  家に住んでいた小さな虫でさえ  この世から消えていく  なぜって  これ以上こ

源はなかった

しずくだけが落ちている 右の足うらとふくらはぎに    ぽたり ぽったん ちとり   源もなく だが足うらとふくらはぎは濡れている いったいどこから落ちてくるのだろう しずく

一人

 もうこのへんでいいだろう  撮影するのはやめてください  ここから先は立入禁止です  わたしだけの場所です  みなさんはみなさんの場所へ帰ってください    先日観た映画「夜の変奏曲」の終演間際の場面、主人公

光成物質

 もうその先は考えないようにしようと思っていた。  長い間、がんじがらめになっていたことは確かだった。だが、手錠だろうか、縄だろうか、鎖だろうか、それとも拘束衣なのか。いったい何でがんじがらめになっていたのだろうか。もっ

たとえ一分でも

そうだろうと思っていた けっきょく そんなところだろうと   だって じっさい   とんちゃん   こうだよ   一分でも楽しく生きることができたら それで いいじゃん

芦屋ビーチクラブ その75

 昨夜、芦屋浜で夏恒例の花火大会があった。芦屋市民のみならず他府県からも花火鑑賞へ。いつもは静かな住宅街だが、毎年この日だけはものすごい人だかり。  我が家は会場に近い。ごく近所。私の友人も四人、車二台でやって来て、我が

花言葉

あたしは しょせん 切り花ですが でも 花として 小さな花瓶の中で けんめいに水を吸いつづけました 一日でも 一時間でも いいえ たとえ四分でも長くここにいたい 切られてしまった こんなあたしだけど お願い M もっと 

亀、遊び大好き。

 今夜、芦屋浜で花火大会がある。もともとは無料でやっていて、浜辺でゴザなどを引いて、亡妻と何度か楽しんだこともある。いつのまにか有料になってしまった。浜だけではなく、総合運動公園でさえ花火大会の入場券を提示しなければ入場

中西弘貴詩集「昭和もしくは過ぎゆく客」を読む。

 私の友人に津田文子という詩人がいて、詩誌「座」を送っていただくことがある。その詩誌で以前からこの詩人の作品には親しんできた。今回、これまで「座」に発表してきた十年間の作品集成としてこんな詩集を出版された。  

街並み

 複雑怪奇な街並みだったといっても、いったい何が言いたいのか、誰にも理解はしてもらえないだろう。確かに彼の記憶も既にボンヤリして薄闇に漂っているばかりだが、それでも気味悪いあの街並みの気配だけは脳裏にこびりついている。彼

永井章子詩集「日々の縫い目に」を読む。

 以前私はこの詩人の詩集「出口という場所へ」(澪標)を読んだ。また、その読書感想文は芦屋芸術のブログに投稿しているので興味のある方は参考にして欲しい。  さて、このたび手にした詩集はこれだった。    詩集「日

詩誌「リヴィエール201」を読む。

 永井ますみさんから詩誌を送っていただいた。    「リヴィエール 201」 発行所/正岡洋夫 編集/石村勇二・市原礼子・内田縁・後恵子 2025年7月15日発行    十五人の詩人が十六篇の詩を発表

冨永滋の詩集「マッチ箱の舟」を読む。

 冨永多津子さんから詩集が送られてきた。一読後、しばらく時が経ってしまった。このたび再読した。こんな詩集だった。    「マッチ箱の舟」 冨永滋著 風詠社 2018年2月9日発行    この著者の詩集

芦屋ビーチクラブ その74

 きょうは日曜日。言うまでもなく芦屋ビーチクラブの日。  でも、いつもと少し違うことがあった。海の日のイベント。みんなブルーサンタのコスチュームで芦屋浜に登場。もちろん、私も。  また、海の日にちなんで、私の母校、兵庫県

亀と百日紅、そして十一年目の命日。

 昨夜は二軒のスナックを回ったが、十時半には帰宅した。翌日、もちろんきょうのことだが、えっちゃんの十一年目の命日だった。  だが、しかし、命日といっても、何か特別の法事をするわけではない。十一年間、土に還らずダイニングル

今夜

どこまでも続く道 この歳になって そんな道があるのが わかった   この道を歩いて あなたは帰ってきた 今夜

命日まで、あと三日。

<Ⅰ> ひとりで ぼうぼうとした場所をさまよっていた   ぼうぼうとした場所? いったいここはどこなんだろう   <Ⅱ> ええ⤴⤴ どこ??   耳が聞こえにくくなっている かろうじて日本語

これぐらいで よそう

身勝手な男 身勝手な女が 出会って 結局 別れた   あるいは   身勝手な男と 愛の深い女が 出会って 結局 別れた   あるいは   愛の深い男と 身勝手な女が 出会って 結局

芦屋ビーチクラブ その73

 汗だくだった。おそらく朝から真夏日だったのだろう。浜の雑草を抜きながら、昨夜から今朝までのあれこれを思いめぐらしていた。  夕方、友人二人を交えて寿司屋で食事をした、もちろん酒を飲みながら。思えば六月の末辺りからこの二

ダメ 絶対 ダメ

とんちゃん この世の女の中に わたしをいれちゃ ダメよ 絶対 ダメ   わたしのいない愛を どうぞ探して   まだ あの世があるから 

亀と逃亡者

 今週は何かと夜遊びの機会が多かったけれど、昨夜は一人でスナックを二軒歩いた。疲れていたせいか、何時に帰宅したのか記憶にない。おそらく十二時前だったのでは。  ぐっすり眠った。朝、七時半。家事を始めた。庭掃除を終え、スズ

愛情を知らない女

 そんなバカな話が、誰しもそう思うかもしれない。だがこれが事実なのだ。かいつまんで話しておこう。リカの不条理な生い立ち。信じられない母親のもとで。   ―あのね、わたしね、四人姉妹の長女だったけど、あとの妹たち

もう汁はイヤ

―ヤミオ。あたしたち、もう一度ニンゲンにもどることって、できると思う? 今のあたしの最大の関心事よ。ニンゲンって、もうニンゲンでもないのに、またニンゲンになるなんて、そんなこと、できる?…… ―確かに今じゃ、リカは緑汁、

詩誌「タルタ」66号を読む。

 先田督裕さんから詩誌が送られてきた。    「タルタ」66号 編集/井上和之・田中裕子 発行/タルタの会 2025年7月1日発行    この詩誌は、九人の詩人が十六篇の作品を発表し、一篇の詩集評で構

ウナギ

―あした、楽しみにしています。 きょうは、お昼、息子たちとウナギ。 精力つけて、あしたにのぞみます。 ―あらまあ。まだ7月6日の日曜日。 土用の丑の日、先取りするのね。 ―近々リカちゃんも行かない? ―ヤミちゃんもたまに

芦屋ビーチクラブ その72

 七月最初の日曜日。家事を終え、スズメたちカラスたちに食事を用意して、朝八時前に芦屋浜へ向かった。庭掃除をするだけでもう芦屋ビーチクラブの制服、水色のT シャツは汗に濡れていた。  きょうも浜の雑草を一時間、抜き続けた。

亀とイタリア料理店

 昨夜は久しぶりに一人でスナックを二軒回ったが、十一時前には帰宅していた。それというのも、きょうの正午、近所のヨットハーバーにあるイタリア料理店マレロッソに二人の友達と昼食の約束があったから。言うまでもなく、その前に、土

夢と歳月

夢は 夢に過ぎないと ずっと思っていた   この歳になって そうじゃないと やっと気づいた   あなたと暮らした 歳月

落山泰彦の「胡蝶の夢 鵲の夢」を読む。

 「胡蝶の夢 鵲の夢」 落山泰彦著 発行人/落山泰彦 編集人/伊奈忠彦 2025年6月30日発行    一気に読んでしまった。おもしろい本だった。この本は自伝とか自分史の分野になるのだろうが、そうとは言い切って