芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

亀、そして秘密の鍵。

 けさは近所の共用の花壇の水やりをしたため、出勤までの朝は忙しくしていた。だから今日の午後一時頃、炎天下、覚悟を決めて、亀の池を掃除した。週に一度くらいは掃除をして水替えをし、池の中で組み立てられた五個のレンガの島の汚れ

南かもしれない

こちらが西だとあなたはいうけれど 太陽も星もない なんの目印もない 灰色の草でぼうぼうと覆われた荒れ地に立ってみれば おのずから笑みを落として わたしはあの方角を指さしたまま こう語った   あなたは西だという

寄稿文芸誌「KAIGA」No.123を読む。

 原口健次さんから詩誌が送られてきた。    寄稿文芸誌「KAIGA」No123 編集発行人 原口健次/発行所 グループ絵画 2023年7月31日発行    四人の作家で十一篇の詩作品が発表されている

芦屋浜ビーチクラブ

 先月から余程のことがない限り、毎週日曜日の午前八時から九時までの一時間、私は「芦屋浜ビーチクラブ」に参加している。言うまでもなく、暑い中、きょうも参加した。もとはといえばこの会のリーダーと飲み友達で、ちょっと俺もやって

眠ることができない

たわめられたもののなかから はじけとぶもの   ひそやかに みもだえして もくしたまま   あなたのゆくすえをあんじて 夜半に めざめ    

ごらん

わたしは、夜ごと、頭の中をさぐりまわっている。すみずみまで。たまには、そこからはみだして、首すじをたどり、はらわたをなめて、足のつまさきまでたずね歩き、足と指のつぶやきを聴いては、じっと耳をすまし、彼等の言葉をノートにつ

熟したやつ

 三個のうち一個は熟しているという。だが、その一個を見つけるのがなかなか困難だった。男でも女でもたいがいの人は、硬くて青いやつを「これだ!」、飛びついて嬉々としているらしい。もちろん、人それぞれで、その選択肢も有りかな、

もうもうとして

砂が落ちていく あちらこちらから しゃあしゃあしゃあしゃあ 音たてながら   落ちていく先は 砂けむりで もうもうとして 見えない   見あげると さまざまなものが 蛇 蝉 蟻 猫   牛 

引きつり

炎の中を歩いている すぐそばを 少年時代によく遊んだ 川が流れている 炎の川が   おおぜいの魚やドジョウが燃えながら泳いでいく 蛇が焼き魚を食べている 見れば 蛇は一本の燃える縄だ くねくね身悶えして 引きつ

液体と死期

乳白色の液体がたくさん零れ落ちて それが雲になったり 波になったり あるいは 左右にわかれ ときに 両耳を隠す あたりはまったく静かだ   乳白色の液体は死期を早めんとしている

脳はそれを望んでいる

垂直に切れば 上から下に向かって まっぷたつになって すべては右と左に倒れていく   だから 水平に切ればいい あなたは そのまま 重なったまま 切れている 離れている 何度も  切れば 切るほど 見事な多層体

 買ったばかりの白い犬が二匹、逃げた。彼等の後ろ姿が地下街へ下りていくのが、見えた。後を追いかけて、あちらこちら探し回った。いままで、地下街にこれだけいろんな店があるなんて、ちっとも知らなかった。  犬に関連する店をしら

さわさわした時

頭が透明になる時がある さわさわしている   鳥が鳴いている 頭の中をはりめぐらした小枝にいっぱいとまって   透明な声だ さわさわした声だ  

死の束

あなたは 束の中から どの一本を抜きとって 吸ってもいい お望みなら しゃぶり続け 恍惚として ぷるぷる 身悶えしてもいい   夏の盛り あたりはみな腐れ果て 驟雨の中 どろどろ 崩れ ねばり べちゃべちゃ 痙

きょうは、命日

あなたは わたしを とんちゃんと呼んでいた   わたしは あなたを えっちゃんと呼んでいた   四十三年間 同じ屋根の下で 毎日 そんな物語が続いていた   九年前 物語は終わった とんちゃ

「日本霊異記」を読む。

 二十一歳の頃、この本を買って読んでみたが途中で投げ出した記憶がある。手短に言えば、最初は面白かったが、同じような話が続いてもうこれくらいで、そう思って本を閉じたのだろう。    「日本霊異記」 景戒著 板橋倫

当たり前の話

あなたの 父や 母は 既にこの世にいない 彼等の記憶から あなたは消えてしまった   あなた自身も消えてしまった この世から 九年前に   あなたを記憶する人たち 妹たち 友人たち あなたの息子たちで

「リヴィエール 189」を読む。

 永井ますみさんから詩誌が送られてきた。    「リヴィエール 189」 発行所/正岡洋夫 2923年7月15日発行    この詩誌は、十三人の作者で十七篇の詩、七篇のエッセイで構成されている。  一

午後一時前、突然、亀の池を洗い出した。

 昼ご飯を済ませた後、ダイニングの椅子に腰かけたまま、突然、亀の池を洗おうと思い立ち、腰を上げた。  真昼の暑い盛りだが、亀の池は木陰になっていて、帽子を被っていれば四十分前後の作業くらいで熱中症になる心配はない。 「と

芦屋芸術18号を出版します!

 芦屋芸術18号を出版します。予定は11月1日ですが、もっと早くなるか、いまからやっていきます。遅くとも年内には出します。  まだ7月です。私は来年の話まで致しません。   *写真は、芦屋総合公園の事務所近くの

自分を犠牲にして

 午後三時ごろ、突然驟雨がやって来た。一時間くらいで止んで、私が散歩に出た五時過ぎには晴れ間が出ていた。  芦屋浜の堤防沿いから、総合公園の西端、樹間の小道を抜け、運動場の南を歩き、いつものように花壇で花の姿をスマホに収

愛の入口

あなたを知ってから あなたの過去を知ってから   この世には もっと広い地図があるのを   わたしは教えられた あなたに愛を覚えるほどに

「風のたより」28号を読む。

 伊川龍郎さんからこんな雑誌が送られてきた。    「風のたより」28号 発行所/風のポスト 2023年7月1日発行    一通り読ませていただいた。  五人の作家で、二篇の追悼文、二篇の詩、一篇の小

「ア・テンポ」VOL.63号を読む。

 牧田榮子さんから頂いた詩誌を読んだ。    「ア・テンポ」VOL.63号 発行所/「ア・テンポ」の会 2023年6月15日発行    この詩誌は、俳句、詩、連句、詩の批評、連句の解説、これらの作品で

七月の他人

 きょうは、暑い日だった。朝九時ごろ、わずらわしい話もあり、また、仕事も従来になく忙しく、終わったのは午前十二時を過ぎていた。いつもは十一時で終わり、十一時半には帰宅しているのだが。そういう意味でも暑い日だった。  昼か

中西徹郎の「介護の天気、晴朗なり」を読む。

 最近、私は介護の仕事をしている友達が出来て、彼女から介護の現場の状況を多少耳にしていた。  そんな折、この本をいただき、強い興味を持って読んだ。    「介護の天気、晴朗なり」 中西徹郎著 澪標 2017年1

六月の終わり

 けさ七時半ごろ、亀の池の掃除をしました。途中、小雨がパラつきました。  清掃後、亀と遊びました。白いキキョウの前を得意気に歩いている彼をカメラに収めました。    白いキキョウと  亀と  六月の終わり

詩誌「座」第75号を読む。

 津田文子さんから詩誌が送られてきた。    「座」第75号 発行/座の会 2023年6月1日発行    六人の作者が十篇の詩を発表している。  全体的に静かな味わいのある詩だった。等身大の言葉を語っ

ドッグラン設置会が高島市長と面談しました!

 きょう、午前十一時半から芦屋市役所で、高島市長を囲み、長谷議員、われわれドッグラン設置会のメンバー四人、そして役所の担当者二名と面談しました。  まず、私(山下)が嬉しかったのは、芦屋市議会開催中にもかかわらず、高島市

九年目の白いキキョウ

 ことしも白いキキョウが咲きました。九年前、この世を去った妻の遺した花です。秋の七草ですが、毎年六月の半ば過ぎには咲き始めます。  けさ、七時半ごろ、写真に収めました。白いキキョウの花言葉は、清楚、従順。つまり、純粋に生

落山泰彦の「石たちの棲む風景」を読む。

 私はこの本を書いた著者の作品を既に二冊読んで、ブログにもその感想文を書いている。書名は、「私の青山探訪」と「石を訪ねて三千里」。  このたび読んだ本は「石を訪ねて三千里」と未読ではあるが「石語り 人語り」、この二冊と共

創世記第二章

疲れていた。 しばらく休憩しようと思った。 しばらく、ちょっとだけ、そう思ってから、もう九年の歳月が流れていた。 しかし、まだ疲れは取れなかった。 九年間、何もしないで、ベッドに横たわったまま、目をつむっていたり、じっと

「芦屋芸術十七号」が出来ました!

芦屋芸術十七号が出来ました! 内容は以下の通りです。目次をコピペしました。          contents <招待作品> 幼い子供たちへの手紙             榎本三知子   5 ベッドに横たわると

源泉へ

 少年時。私は薄暗くてまるで蜘蛛の巣のように迷路になった酒蔵の谷間をあてどなく彷徨したものである。ある時は曲がりくねった道を背後から何ものかに追いかけられている心地がして、どきどきしながら歩き続けていた。直進しているかと

月光仮面

突然、誰かが扉を叩く。≪遂にやって来たな!≫ 純白の寝台からずり落ちてぼくは床に尻餅をついてしまった。と同時に、パッとズボンが裂けてしまったのであわててコートを引っ掛け、やけっぱちに扉を蹴りあげる。がむしゃらに飛び出した

星の家

月の光の降りそそぐあぱあとの屋根の下 明かるい窓の中から 子供の影絵がうたをうたってきた さっきまで台所のほの白んだ水の底で こつこつまな板を叩きつづけていた手をふと休め どうやらおかあさんは六月の夜にふさわしく しんと

ドングリの木の彼方まで

 広い草原のまんなかに大きなドングリがなる木が一本立っていました。まだ二十歳になるかならないか、そんなふたりが連れだって木をよじ登っていきました。風が吹く度、背中の辺りで木の葉がザワザワ騒ぎたてました。風にユサユサ震えて

愛が

わたしのなかに ろ過器がある それは イヤなことをみんなろ過してしまう いい思い出だけを残していく   あなたへの愛が ろ過器だった

詩誌「オリオン」第三十九号を読む。

 東川絹子さんから詩誌が送られてきた。    「オリオン」第三十九号 編集人 松川/東川 2023年5月20日発行    この詩誌は、二人の作家の作品で構成されている。  まず、松川紀代の詩作品は八篇

「月刊ココア共和国」2023年4月号を読む。

 この詩誌を一通り読んでみた。    「月刊ココア共和国」2023年4月号 発行人/秋亜綺羅 編集人/佐々木貴子 あきは詩書工房 2023年4月1日発行    前半は、この詩誌が運営している三つの賞、

落山泰彦の「石を訪ねて三千里」を読む。

 私はこの作者の著書「私の青山探訪」を読み、今年の二月二十二日、芦屋芸術のブログにその読書感想文を書いた。  このたび、同じ著者からいただいたこの本を読んだ。    「石を訪ねて三千里」 落山泰彦著 澪標 20

「現代詩神戸」281号を読む。

 永井ますみさんから詩誌が送られてきた。    「現代詩神戸」281号 編集 永井ますみ/今猿人/神仙寺妙 2023年6月10日発行    一通り読んだ。さまざまな人が自分だけの独自な作品を発表してい

六月 きょうも歩いていた

今まで 長い歳月をかけて 積み重ね 織りあげられたさまざまな言葉が 歩くたびに すべて はがれ落ちてゆく 誰もいない 言葉が絶えた真昼 六月 小雨の中 海辺の音を聴き 公園の樹林を通り抜け また あの花壇へ出た &nbs