まだら模様が、彼の眼前で、次第に形を成してきた。不思議なこともあるもんだ。全体がつぶつぶのシズクで覆われていたまだら模様の画面に、ひとつの形が、顔だ、顔、間違いない、あの人の顔が。
まだ生きているのかもしれない。なぜって、ちょいと人差指でくちびるの下をつるりん、撫でてみたら、ぬめぬめして、ぬくもりも感じたんだもん。トテモなつかしいあの人のぬくもり。だったら、リカちゃんが帰って来たのだろうか。いや、それとも、Mは闇男に、あのヤミちゃんになって、この世からリカちゃんの方へ出かけたのだろうか。
もうそんな疑問なんてどうだっていい。今度は、ちょっくら、ふたつの耳たぶをつまんでみた。両手の人差指と親指で。
頭の中で何かが変化していた。何か? そうか。糸のようなものだろうか。待てよ。こりゃ、弦だ。十数本の弦の上を、両手の十本指がしなやかに、艶めいてうごめいている。震えている弦から無数のつぶつぶのシズクが、辺り一面、乱れ、まき散らされている。既に足もとからMの顎のあたりにまで奇妙に振動する濃緑の液体がたまっている。
ヤミちゃん 愛は液体なのか
リカちゃん そうかも