芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

海鳴り

 夕方、辺りは赤味を帯びて輝いていた。月並みな表現ではあるが、夕焼けが燃えていた。山の中腹に位置する温泉街なので、晴れた日の夕暮れ時はいつもこうなのだろうか。  バス停があった川向うから橋を渡った交差点、左手の対向一車線

芦屋ビーチクラブ その18

 きょうは日曜日。朝八時から芦屋浜のお掃除。やはり、先週からやり残している雑草抜きと石ころ拾い。  思えば、作業をしていると、一時間くらいはアッという間。結局のところ、雑草抜きは未完成交響曲。ヨシ。来週も雑草を抜くぞ!

どんづまりだった

 暗くて明るいのがあるかもしれない。ボクがそう呟いた時、何が言いたいのかさっぱりわかんない、あなたは頭ごなしに否定した。けれど、ねえ、お願いだ、まったく意味不明だなんて決めつけないでくれまいか。  どうしてボクをそんなに

「風のたより29号」を読む。

 伊川達郎さんからこんな文芸誌が送られてきた。    「風のたより 29号」 発行所/風のポスト 2023年12月1日発行    一通り読ませていただいた。詩、小説、評論など、さまざまな作品が収録され

結局

 どうしてこれほどまでに穏やかな気持ちなんだろう。既にここまで追いつめられて、逃げ場はもう十歩たりとも背後に残されてはいなかった。  確かにそれが事実なんだろう。また、この期に及んで、まさかこの事実から目をそらそうなんて

会議室

 それは空しい抵抗なのかもしれない。何故もっと早く気づかなかったのだろう。今となっては、もう手遅れなのだろうか。  こんなうっとうしい話なんて、誰も聞きたくもないだろう。私が語り始めたならば、みんな耳を両手で塞ぐだろう。

新たな部屋に招かれて

 いつもの行きなれたレストランだった。私は妻を亡くしてから、朝と昼のご飯は自分で作っているが、晩は毎日外食だった。そのうえ、同じレストランばかり通っていた。ひとりで生活しているので、余りストレスになることは避けて日々を送

亀、冬眠間近。

 午後一時前から亀の池の掃除を始めた。水が冷たい。  掃除が終わってからしばらく彼と遊んでいた。やはり寒くなって動きがゆっくりしている。次回の水替えか、それともその次か。いずれにせよこの寒さなら十二月十五日前後までには、

後藤光治個人詩誌「アビラ」16号を読む。

 後藤光治さんから詩誌が送られてきた。彼の個人詩誌だが、そして彼ひとりで執筆しているのだが、いつも私は楽しみにしている。ひとりでよくここまでやっているなあ、教えられ、また、励みにもなっている。私も「芦屋芸術」を持続しなけ

小さな暗黒

それは突然流れ出て来た そう言ってよかったと思う 決して夢ではなかった 妄想でも まして冗談でも   開いていた 理由は知れなかった 驚愕したまなざしでそれを覗いていた あなたと二人だけで   奥は見

チュンチュンするもの

うごめくもの からだじゅうで   体中でも 体外でも   これはいったいなんだろう 小さいのは一センチ いや もっと小さく   大きいのは三十センチくらいもあって 朝から   下手

ツイツイと

首を絞める人がいる 深夜ではない 真昼だ   人影はなかった 両手だ 最初 両手の気配だけだった   空中移動する 輪になった 十本の指   人であって 人ならざるもの 指だけで &nbsp

芦屋ビーチクラブ その17

 きょうも、日曜日の朝は芦屋浜の清掃活動。前回に引き続き雑草を抜きながら、石を拾って、ゴミ置き場へ。  確かきょうは寒くなるという予報だったが、作業をしているとむしろ爽やかな朝の時間だった。  こんな反省をした。……きょ

右の乳房まで

深夜に目覚め ベッドに横たわったまま ボンヤリ天井を見つめていると にじり寄って来た もうすっかりあなたは あの世で生きているとばかり思っていた だが 左の頬から耳たぶまで吐息で湿って くすぐったくて まだ天井を見あげな

穴の向こう側に

 限りない淵がある。今夜、それを覗くまでは、そんな淵があるなんて、まったく信じてはいなかった。そればかりではなく、まるで興味もなく、まして詮索するなどは思いも寄らなかった。  確かに深い淵は我が国土にも散在しているだろう

背中で音がする

 カシャカシャという音がする。しかし私は聴いていないふりをした。だって、そうじゃないだろうか。自分の存在感を示すために音まで出すなんて。  止めろ! ほんとは大声で怒鳴ってやりたい。音なんて出す前に、背中を向けて、さっさ

無数で

 網目模様が消えているのがわかった。  最初、それは微細な黒と灰色の糸で編まれてさながら一枚のダークグレイのスクリーンだったが、まず、灰色の糸だけが溶け、ぽっとり滴になって、落ち、黒だけが残された。網目は少し大きくなり、

咳をした後で。

 微熱、咳、鼻水。ここ十日間くらいそんな症状を引きずっている。けれども、私は病院にも行かない、薬も飲まない。  午前中はいつもの通り、事務所へ出て従来通り仕事をしている。また、午後からは読書や散歩、あれこれ文章を書いたり

「リヴィエール 191」を読む。

 永井ますみさんから詩誌を送っていただいた。きょう、一気に読み終えた。    「リヴィエール 191」 発行所/正岡洋夫、2023年11月15日発行    十三人の作家が十四篇の詩を発表している。また

「千葉県詩集 第56集」を読む。

 宮武孝吉さんからこんな本が送られてきた。    「千葉県詩集 第56集」 発行人/秋元炯、発行所/千葉県詩人クラブ 2023年11月5日    102名の方が2頁に1篇の詩を発表している。中には、2

亀、今年も終わりに近づいている。

 きょうは、朝八時から芦屋ビーチクラブの活動に参加して、芦屋浜の清掃作業をした。  先週は体の調子が少し悪くて、また、雨や風の強い日が多く、亀の池の掃除を怠ってしまった。通常は毎週一度くらいやっているのに。  とても気に

芦屋ビーチクラブ その16

 きょうは、日曜日。  朝八時から恒例の芦屋浜の掃除を開始。  私の仕事は、前週に引き続き雑草抜き。それと同時に、石拾いをした。大小さまざまな石があちらこちらに転がっている。来週もう一度雑草を抜けば、一応雑草抜きは終了す

「別冊關學文藝」第六十七号を読む。

 前号(第六十六号)に引き続いて、この本を読んだ。    「別冊關學文藝」第六十七号 発行人/伊奈忠彦、編集人/浅田厚美 2023年11月10日発行    総合文芸誌として小説や詩や前衛劇の脚本、エッ

波だけで

波 押し寄せる波   海でもなかった 川でもなかった そもそも水なんてなかった 波だけが騒いでいた   浮かんでいるものも 流されるものもなかった ゴミや 木切れや ビニール袋……いかなる漂流物もなか

ぜんぶ くずれる

おかしなこともあるもんだ   わたしは最初 一枚のジョーカーを 床に落としただけだと思っていた   ジョーカーを床から拾い上げて 振り返ると   ぜんぶ くずれていた

「別冊關學文藝」第六十六号を読む。

 縁あって、伊奈忠彦さんから総合文芸誌をいただいた。    「別冊關學文藝」第六十六号 編集人/浅田厚美、発行人/伊奈忠彦 2023年5月10日発行    この本は、関西学院大学のOBが中心となって運

空洞

 もう会議は始まっているらしい。   まず議題を何にするかな、ポツリと誰かがそんな言葉を落とした。議題も決まっていないのか、ざわめきが噴き出して、怒号が飛び出した。待て、しかし、確かに、右手の方からしっかり断定する発言が

芦屋ビーチクラブ その15

 きょうは、日曜日。朝の八時から芦屋ビーチクラブの活動が始まる。  先週に引き続いて、きょうも浜の雑草を抜く作業を続けた。曇り空で、冬めいてきて空気も冷たく、雑草抜きくらいでは汗が出なくなった。  作業を終えるといったん

最後のゴルフ

 九年余り、私はゴルフクラブを握ったことさえなかった。確かに我が家の玄関ホールには、まだ私と亡妻のゴルフバッグは置かれていた。玄関を出入りするときは必ずその姿が目の片隅を掠めるのだった。そのたび、二人だけの思い出が私の脳

亀、互いに愛しあう存在。

 きのうやる予定だった。だが午前中仕事が忙しく我が家にたどり着いたのは午後二時を過ぎていた。天気も小雨が降ったりやんだり。明日の天気予報は晴れになっているので、先送りしてしまった。  夜中に雷と雨でそうとう荒れたのだろう

午前三時三十七分だった。

 いつの間にか眠っていた。夜中に激しい雷が連続して、雨の音の中で目覚めた。  もう細部は忘れてしまったが、さまざまな映像や歌が流れていて、このまま朝まで起きているのだろう、ベッドの上で何度も反転を繰り返しながらそう思った

芦屋ビーチクラブ その14

 きょうは、日曜日。芦屋ビーチクラブの日です。朝、四時前から詩を書いたり、家事があれこれあって、少し遅れて、八時過ぎに芦屋浜到着。  先週予定した通り、浜に生えた雑草を抜いた。十一月だというのに、真夏日の朝に近く、半袖で

十一月の洞窟

スサマジイ穴ダ!   やっと つきとめた どうやら ここだな オイ さっさと 出てこい 庭の方へ いやなら ココから入っていくぞ   すさまじい十一月が来た あの人はまだ洞窟に住んでいた

吉本隆明の「文学の原型について」を読む。

 松岡祥男さんからこんな本が送られてきた。わたしが送った「芦屋芸術」のお礼だった。    「文学の原型について」 吉本隆明資料集185 発行所/猫々堂、2019年5月25日発行    この本は今から四

流れ去り 消えてゆく中で

ものみな流れ去り  消えてゆく   だが 決して それは川のことではない 無常の表現ではない    未明 三人の女の 手 脚 首 胴 耳 乳房 唇など   そして 頭から毛 足指の先まで バ

十月の終わり

十月三十一日 未明 すべてが分解して 崩れ去っていく夢からさめた だが目覚めた時には いったい何が分解したのか 崩れ去ったのか 思い出せなかった 瞑目して もう一度その夢の果てを追いかけた…… 天井から 台所の流し台へ

亀の池の掃除、十月の終わり、蚊に刺される。

 朝は少し冷え込んでいたので、一週間ぶりの亀の池の掃除は昼からにしようと思った。予報では、最高気温は20度になっていたから。  午後一時頃、掃除を始めた。天気も良く、気温もあがり、作業をしていると汗ばんできた。いつもは蚊

「座」第76号を読む。

 津田文子さんから詩誌が送られてきた。    「座」第76号 発行/座の会 2023年10月1日発行    六人の詩人が十篇の詩を発表している。歳月を感じさせる詩が多い。  中でも中西弘貴の「炊事場」

芦屋ビーチクラブ その13

 朝夕は冬めいてきた。きょうは日曜日。午前八時にいつものように芦屋浜へ出た。  浜のゴミは少なかった。リーダーの中村さんに聞けば、「冬になるとゴミは少なくなる。潮流の影響でしょうか」  はやく掃除が終わったので、みんなで

それは冬ではなかった

 何が濁っているのだろうか? 皆目見当がつかなかった。頭が濁っているのか?    決して冬のせいとは言わない。冬ならば、澄むのではないか。寒冷ならば、ものみな枯れるのではないか。そこでは夏の一切は消えてゆく。む

「イリプスⅢrd05」を読む。

 前号に引き続いて、詩を中心にしたこの総合文芸誌を読み続けた。前号の私の紹介文は10月24日付の芦屋芸術のブログをご覧いただきたい。    季刊「イリプスⅢrd05」 編集/イリプス編集部、編集人/松尾省三、2

「芦屋芸術十九号」を出版します!

 「芦屋芸術十九号」を出版します! といっても先日、十月十九日に「芦屋芸術十八号」を出版したばかり。発行日は来年の三月一日の予定。  十八号には五人の方に寄稿していただきましたが、十九号はさらに一人増えて、六人になります

秋の終わり

 なぜいないんだろう。こんなはずではなかった。せっかく、横浜から、わざわざ、ここまで。  かなり冷えこんできた。もう引きあげようか。どうして。神戸まで。せっかくだったけど。やはり。でも。このままじゃ、あの女は。  いや、

「イリプス Ⅲrd04」を読む。

 私は若干詩を書いているが、ほとんどその関係の付き合いはなく、特定のグループにも所属せず、ただひとりっきりで書いている。縁あって最近、倉橋健一の指導する文章の会に顔を出すようになった。この十月に彼と会ったとき、二冊の本を

亀、たまらない気持ち。

 先週の月曜日に亀の池を掃除してちょうど一週間。けさは二時半ごろ起きてきのうから頭に浮かんでいで気になっていた言葉を「脳が走っている」、一時間余りをかけてそんな作品にした。この作品の挿絵は午後に描いてホームページに発表す

脳が走っている

 距離を縮めることは出来なかった。高層ビルとはいっても、それはとてつもない高さだった。百階建てどころではない。二百階か、あるいは三百階か、いや、それ以上ではなかったか。その距離を縮めることが出来なかったのだ。  視線は屋

芦屋ビーチクラブ その12

 きょうも朝八時前、芦屋浜へ急いだ。七時ごろから庭掃除をしていると、少し肌寒く感じた。芦屋ビーチクラブのユニホームの青いTシャツの下に、夏用の長袖のスポーツウェアを着込んだ。妻と一緒に始めたゴルフは彼女が亡くなってから止

たそがれの果てに

 なにもかも崩れていくのが、わかった。なぜもっと早く気づかなかったのか、耳をつねってみても、思いあたる節はなかった。  確かみぞれが降っている冷たいたそがれ時だった。軒をたたいている音が脳裏を鮮明に刻んでいる。パラパラパ