芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

亀さん、冬眠から目覚めました!

 このところ春だというのに寒い日が続き、また、雨がよく降った。

 気になることがあった。この気候では冬眠中の亀を起こすことはマズイんじゃないか。もう少し春らしくないと。

 今週の水曜日は晴れで暖かくなる予報だった。それ以降、徐々に暖かくなっていくらしい。ヨシッ! 水曜日だ、水曜日に亀を起こしてやろう。だが、冬眠から目覚めるだろうか。大丈夫だろうか。十年前にワイフを喪ってから、八年前に愛犬ジャック、四年前に愛猫アニーがこの世を去った。ワイフと共に生きた生命は亀だけになってしまった。私には深い思い入れがある同居人だった。果たして今年は……

 きょうは水曜日。予報通り晴れ。私は会社を休んだ。

 池を洗ってキレイにして、バケツに入れた腐葉土の中に眠っている亀を取り出し、体を水洗いした。しばらく庭で様子をうかがう。じっとしている。全身甲羅だけである。だが、よく見れば甲羅からほんのわずかで微妙な誤差に過ぎないが、手が出ている気がする。生きている! 二十分ほど様子をうかがっていると、頭も少し出て来た。三十五年目の春だった!

 

*写真は、池で泳ぎ始めた亀。今年も元気でボクと遊んで欲しい。