芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

ジャン・ド・ベルグの「イマージュ」再読

 この本を読んだのは三十歳前後の頃だろう。過日、マゾッホの「毛皮を着たビーナス」を再読したので、この作品ももう一度読んでおこう、そう思った次第だった。

 

 「イマージュ」 ジャン・ド・ベルグ著 行方未知訳 角川文庫 昭和52年1月20日八版

 

 戦後、1956年にフランスの「深夜叢書」から出版された、所謂「SM小説」だった。いちいち解説の要はない。ニンゲンの裏側に渦巻く薔薇の性愛を緻密に言語化した作品だった。ビジネスの世界や通常の日常生活では見えない裏側、ニンゲンの裏通りに迷走する激しい愛の路地を読者は歩き続けるのだった。

 ちなみに、ジャン・ド・ベルグはペンネームで本名はカトリーヌ・ロブ・グリエ。アンチロマンの代表選手アラン・ロブ・グリエの妻。言うまでもなく夫の方は1957年に「嫉妬」を発表している。トテモステキな小説だった。同じ作者の「消しゴム」や「快楽の館」もよかった、若い頃の記憶に過ぎないけれど。