芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

蘇生

 昨夜、なまなましい夢を見た、昨夜と言っても、きょうの午前2時から3時頃のこと。

 最初、それはなんだかゴタゴタしていて混沌した、灰色の激しいうねりのようなもの、今ではそんな記憶だけが残っている。

 その灰色のうねりを破って、ボクは疾駆したと思う、何かにせきたてられて階段を駆けあがっていた……もう10年以上昔になるが、あの頃住んでいたマンションに似た部屋のドアを貫通して、事実ボクは透明人間みたいに走り抜け、しかし不思議なことにボクひとりではなかった、背後に気配を感じていた……

 リビングには5メートル四方くらいのプールがあって、去年の夏に死んだボクのワイフがうつぶせになって浮かんでいる。プールに飛び込み、ワイフをかかえあげる。彼女は死んでいる! 全身硬直している! 救急車を呼んでくれ! ボクは狂ったように連呼している……

 彼女を抱えてプールからはいずり出し、床にあおむけに置く、くちびるとくちびるをあわせ水を吸いあげる、何度も何度も頬ずりしている……

 ……死後硬直していた肉体が柔らかくなっている、両眼を開き、ボクを見つめている、微笑んでいる、彼女は死んではいなかったのだ、ただ眠っていただけなのだ、ボクは眠りから覚めた彼女のからだを抱きしめている……