芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

詩誌「鳥」第79号を読む。

 榎本三知子さんから送っていただいた詩誌を読んだ。

 

 詩誌「鳥」第79号 編集者 佐倉義信/なす・こういち/元原孝司 2020年10月31日発行

 

 この詩誌は十二名の作家の詩作品十五篇、エッセイ二篇、自叙伝一篇で構成されている。死と生の間から湧き出してくる言葉を織り上げた作品が多くみられた。反戦の姿勢を強く書き記した作品も含めると、ひょっとしたら、この詩誌の重要な特異性なのかもしれない。

 二篇のエッセイに注目した。榎本三知子の「姪孫 二人への手紙(二の続き)」。三回連載されて、今回が最後なのだろう。著者は小学校三年生で終戦を迎えるのだが、小学校低学年の頃の自分が経験した戦争体験をもとにして現在の同じ年頃の子供たちに向かってわかりやすく語っている。まるで童話を語るように語っている。おそらく戦争体験を語ることが出来る人はますます少なくなっていくのだろう。悲惨な出来事を語りながら、なぜか美しい。著者の人柄だろう。

 内部恵子の「コロナ禍だからこそ~母の日記を通して」。このエッセイは、著者の母親の日記を本にするいきさつを語っている。自分の母親を語るとき、この著者のように、正確に、虚飾なく素直に、そして深い愛情から語ることが出来る人は、少なくとも私は、結構長い人生を渡ってきたが、ほとんど見かけなかった。ステキではないか。