芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

晩年

毎晩、マザーとワイフが漢字の二を描いて蒲団に横たわっている、そこには合計155年の歳月が。マザーはといえば、状態がいい時はワイフが長女でありその名前さえ言い当てることが出来るが、悪い時は、オネエサンと呼ぶ。

すべては老いてゆく。アニー(猫)は12歳、ジャックは10歳(犬)。一般に犬より猫のほうが長寿ではないかと思うが、特にジャックは黒いラブラドール・レトリバーで、レトリバー系の大型犬は、ボクの知る限り、だいたい10歳から12歳くらいで亡くなっている。もっと長生きしてもせいぜい15歳前後か。ジャックは既に老境に入っているだろう。

亀もいる。我が家の庭に小さな池があり、そこには24歳の亀が。次男がまだ小学校五年生の時の誕生日のプレゼント。彼はプレゼントを残したまま家を出たが。亀さんがこんなにも長生きしているわけは、適時の水換え、毎日のエサ、それに冬眠。冬眠は12月頃、バケツに腐葉土を入れ、その上に亀さんを置く、するとすぐにもぐり込んで、この世から姿を隠す、来年の春まで。

とにかく、もうすぐ九十になるマザーと六十代半ばのボクとワイフ、アニー、ジャック、亀さん、八歳になる金魚たちが同じ屋根の下で暮らしている。きょうもまた、夜になった。最初に言った通り、マザーとワイフは漢字の二を描いて蒲団に横たわっている。