やめてください。そんな声がした。どこで? 誰が? いつ、叫んだのか、皆目わからなかったけれど。
細菌、いや、違った、最近、耳が遠くなっているはずなのだが。一メートルくらいしか離れていない人がしゃべっていても、彼女の綺麗な唇が開閉しているのを、じっと見つめているだけ。
もう、これくらいでよそう。声は消えても、まだ、視野には、確かに年々狭くはなって来てはいるが、色が残っている。だから、色が欲しい。
とりわけ、ベージュの、あるいは、肌色の上に浮かびあがった紅が。
あの仄暗い池のほとりで、ゆっくり、開き始めた、紅の花びら。
だから
あなたに 色情狂と馬鹿にされてもいい どうぞご勝手に
何度も言わせてもらいます もう音なんていらない 色を 色をください
その 紅の花びら