芦屋芸術|芸術誌・現代詩・小説

亀とスナック

 私はいつも金曜日の夜は、スナックのカウンター席の右隅に座り、右半身をそっと壁に傾けて、時折、目を閉じ、ウイスキーのグラスを唇に寄せ、あるいは、その唇は煙草をくわえてみたり、午前零時が来るまで遊んでいる。

 

 昨夜は左隣に座った男性から二十九歳で商売を立ち上げてもう二十五年が経ってしまった、そんな話を耳にした。初対面だった。彼は二十年余り年下。私の場合はもう五十年近く今の商売をやって来ているが、そして経営権は十年くらい前に次男に譲渡しているけれど、あなたと同じく私も二十九歳から商売を始めた、あれこれ会話を交わした。

 長年商売が持続できれば周りから気楽な生活をやっているとみられがちだが、明日をも知れぬ奈落の前にいつも立っている、特に最初に商売を立ち上げたニンゲンは痛いほどまともに飯が食えるまでのすさまじい苦しみを味わってきている、そんな趣旨の話にまで及んだ。たがいの経験を語り合って、商売は違うが、心の底に通い合う流れを感じた。いい夜を過ごした。

 

 スナックは金曜日夜の遊びだけれど、亀は土曜日午前中の遊びだった。

 

 亀の池の掃除が終わると、きょうは我家の前の道路へ出て彼と遊んだ。

 表に出て私は亀に呼び掛けた。亀さん、コッチ!

 すると、まず門に近づいて、

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 門を通り抜け、

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 ひたすら私の方に向かって、

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 到着しました♥

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 ヨシッ! 道路で遊ぼ‼

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*トップの写真は、さんざん道路で遊んだ後、帰宅途上の亀。