芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

身障者のカアカアが、生きていた!

 今年の四月十九日に出版した「芦屋芸術十四号」に、私は「カアカアと、このひとときを」という作品を発表した。この作品は二部で構成され、第一部は「カアカア、帰らず」という題になっていた。

 私は我が家の庭に遊びにやって来るカラスをいつしか「カアカア」と呼んでいた。詳細は作品に書いてある通りだが、念のため一言すると、第一部に登場するカラスは身体障害者だった。小さいときに仲間のカラスにいじめられ、右羽に障害を残し、空を自由に飛べず、歩くときは右足を少し引きずりながらピョコピョコ飛び跳ねて移動する。

 カアカアは亡妻の七回忌、二年前の七月十九日に我が家にやって来て、その年の十月の半ばから忽然と姿を消した。私がご飯をあげていると、仲間のカラスに襲撃されたのだ。そんな日が何度も続き、ついに彼は我が家の庭から去った。あれからもう一年半余りの歳月が過ぎていた。おそらく彼はこの世にいない、私はそう思っていた。

 けさ、いつも通り仕事に出かけようとして九時過ぎに玄関を出たところ、向かいの家の金網の塀に一羽のカラスが止まっている。カアカアだ! とっさに、「カアカア!」、私は叫んだ。彼は辺りに気を配りながら、例のごとくピョコピョコ飛び跳ねて、私の立っているすぐそばまですり寄るように来た。「カアカア、ちょっと待って」、家に駆け込み、キャットフォードが入っている容器をつかんで、私ははだしで飛び出した。