芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

カアカアは、食事中!

 我が家にいる時は、私はたいがいダイニングルームで、パソコンや本やペンやメモ用紙やらが積みあげられたダイニングテーブルを前にして、座っている。いつも北向きに腰掛けていて、六年前までは亡妻が私と向き合って、彼女の背後にキッチンルームがある。

 私の背後、南側のガラス戸の向こうはウッドデッキになっていて、その手すりにカアカアが立って、私の背中めがけて鳴き叫び、食事を催促することもある。ガラス戸を覗いて、カアカアと見つめあう。「カアカア、少し待ちなさい」。せわしない気持で、キッチンルームでパンをちぎったり、愛猫アニーのキャットフードをにぎったり、そして速歩で私は庭へ出る。

 小さいときに仲間のカラスにいじめられ身体障害者になったカアカアはとても神経質で、そわそわして辺りを警戒しながら食事する。「カアカア、おじさんがいるから、大丈夫だ、ゆっくり食べなさい」、そんな私の助言も効果はない。あいかわらずオドオドしている。カラス仲間の襲撃を恐れている。実際、私が目を離した瞬間、カアカアは仲間のハシブトガラスに襲われ、ご飯を強奪された。しかし、確かに、健常者のカラスだ、といって非難しても、腹がへるのは、いっしょだった。