芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

藤井章子の詩「夏祭り」

「すてむ51号」(2011年11月30日発行)の32頁から34頁まで。藤井章子の詩について。

第1行初頭「闇のはじまりに」、最終行末尾「土のそのしたにある土」。これら闇と闇の隙間に「夏祭り」は生成し、一瞬の賑わいを織りなして、消滅するであろう。
この詩は、視覚言語と運動言語が絡まりあって成立している。つまり、良質な生理言語といっていい、力動的でありながら隠微でもある視覚とその運動、本能まで刺激するに至る良質な象徴を開拓せんと意志しているといっていいと思う。
確かにこの詩人の住いからすれば、この世の出来事に対する悲しみや憤りを言葉にしていくのは彼女の力量からすれば容易いであろうし、それもひとつの方法ではあろう。十数年前、僕の住む阪神地区でもそういう方法で詩を書いていた人々は枚挙にいとまがない。

しかし、僕はこの詩人の一切を具象物によって純化せんとする悲哀の象徴詩、美しいニヒリズムを好む。