芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

松川紀代の「夢の端っこ」

 久しぶりに松川さんの詩を読んだ。どちらかと言えば、余計な飾りなんて捨てて、透明度が高くて、ちょっと静かで、それでいてオシャレな言葉だけを選んで、モザイク状に組み合わせて、この詩人特有な、くちもとに微笑をただよわせながら、しかしツンとすましている。表面はあれこれ手をかえ品をかえ変化させていても、昔から中味はかたくなに変えようとしない、シンの強い詩人だった。

 

 セミの抜け殻に 陽が射して

 毎年私は歳を取る(本書26頁)

 

 例えば、この二行なども、長編詩「万物流転」の片隅を彩っているのだけれど、この二行だけでしっかり詩が成立していると言っていい。

 

 「夢の端っこ」 松川紀代著 思潮社 2018年8月30日発行

 

 豊かな心を持ちながら、なぜか極めて生真面目である。それが松川さんの言葉選びの良質な面であり、また、逆に言えば、ざっくばらんで破天荒な面から少し遠ざかって、いつも身を引いている。そんなもどかしさがある、と私は思っている。

 言うまでもなく、松川さんの場合、論理の整合性ではなく、イメージの整合性をトテモ大切にして言葉を紡いでゆくのだが、そして折々にいろいろキレイな衣装に着飾っては平気でそれを脱ぎ捨てていくけれど、このイサギヨイ姿もまた、昔からチットモ変わらないナア、衣装なんてコロコロ変わるが、肉体は永遠だ! 松川さんの詩を読んでいて、そんな声を私は聞いた。