芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

飛べない、カアカア。

 カラスが力強く空中を飛翔する姿を、町中であっても、私達はよく見かけている。では、カアカアはどうか?

 率直に言って、カアカアの場合、空中を「飛翔」する、そんな英姿を、私は一度たりとも拝見していない。幼い頃に、仲間のカラスからイジメにあって、右羽を傷め、右脚が少し不具合になってしまい、ご近所回りの路上を足を引きずりながらピョコピョコ前進している姿なら、よく見かけるのだが。

 確かに飛ぶこともある。この辺りは二階建の家が並んでいるのだが、まず地上から庭木の枝へ飛び移り、ガレージの屋根へと飛び渡り、そこから一階の屋根、二階の屋根へと飛び上がっていくのが、カアカアのオーソドックスな「飛翔」パターンである。

 まことに残念ではあるが、カラスの世界にもDVやイジメ問題があるのだろうか? 不憫でならない。