芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

山中従子の詩、あるいは、途方に暮れること。

 最近、詩誌「草束」38号を読んでいて、山中従子の詩に私は出会った。二篇の詩だった。

 

 「山の上の博物館」

 「靴」

  草束(くさたばね)38号 所収 発行者岸和田市図書館友の会・詩の教室 編集責任者ごとう早苗 2020年4月5日発行

 

 私はかなり山中従子の詩を読んでいるが、この詩人の大きなテーマの一つは、毎日反復される日常生活の中で我知らず非日常生活に迷い込んでしまい、すっかり途方に暮れてしまった一人ぼっちの世界を、超現実的散文詩として言語化する作業だろう。現在まで、えんえんとして、無数のひとりだけの迷宮を言語によって形象化している。今回発表された二作もひとりだけの小さな迷宮を言語作品として結晶し、その結晶体の中で作者はただ途方に暮れて立っている。この迷宮の行き着く先はどこだか皆目わからない、また、そもそも、いったいわたしは何をしているのかさえ、まったくわからない、すなわち、不可知の時空の言語表現だった。