芦屋芸術|芸術誌・現代詩・小説

胸に咲く花

 昨夜は家飲みしているところ、ラインが入った。

 

S美 今から出て来ない。どう? すぐ返事して。他の男探すから。

M郎 わかった。すぐ行く。どこにいるの?

S美 H駅の近く。

Ⅿ郎 十分くらい待って。タクシーで迎えに行くから。

 

 まだ八時前。二人が初めて出会ったスナックで、ソファーに並んで座ったまま、ハイボールの杯を重ね続けては、カラオケのマイクを握りしめた。

 やっと一息。S美はM郎をじっと見つめて。

 

S美 頭にこんな言葉が浮かんできた。スマホでメモして。遅いわ、ねえ、もっと早く。

 

 Ⅿ郎は酔っ払った指先でスマホのメモ帳にS美の唇から流れるこんな言葉を刻んでいた。

 

―色とりどりの花がママの胸もとに咲いているわ

 きのうは母の日だったなあ

 Mちゃん この花 摘んでイイヨ

 そのかわり あの件 わかってるわね いい この花 忘れないで ママに感謝

 

 奇妙なふたり。