芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

このまま じっと ずっと ぞっと

 三度三度の食事は今のところ、問題なかった。食べることが出来なくなれば、死が近い、昨夜そんな話を耳にした。寝ている間に耳にしたので、これが例の夢のお告げというものか。

 そういえば彼女が亡くなってもう十一年が過ぎてしまったが、毎日出てくる。だったら夢のお告げは彼女の声だったのか。それなら、死の間際になっても、彼女は出てくるのだろうか。まだそんな噂話は耳にしていないが。

 もうすぐ、出て来る。じゃあ、その時、聞いてみよう。ずっと彼女の幽霊と一緒に暮らしてきた。時折、いいかげんにしてよ、幽霊はそう言う。でも、怒ったふりして、いつも、微笑んでいるんだ。

 ご存知だと思うが、死体が幽霊になるわけではない。だって、間違いなく、死体は既に完全に焼いてしまったはず。多少の骨を残して。だから確実に言えることなんだが、死体からは決して幽霊は発生しない。生前の彼女の中の何かが化けて出てくるのだろう。もしかして、それを愛というのだろうか。毎日。行ったり来たりして。幽霊もとても忙しい。たがいに、未練なんて残してしまったから、こうなんだ。余りに奇妙で、笑い話にもならないが。十一年たっても、まだ未練がましく、離れがたいほど。朝も晩も。いや。家の中だけではない。深夜、JR芦屋駅前の小さな繁華街を、酔っぱらって、そっと肩を抱きしめて歩いていたりして。