芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

「散乱するものの再生」について

この作品集は1996年9月2日にミッドナイト・プレスから発行されました。

この詩集は横書きで書いたため、その当時付き合いしていた詩人連中から痛烈な批判を浴びました。
いわく「せめて縦書きで書いてくださいな。読みづらくてしょうがありません」

もう14年も前のことですが、僕はビジネス文章のほとんどは既に横書きであり、
詩人や文学者や新聞・週刊誌マスコミ等はいまだ縦書きでやっている、そんなふうに思っていました。
いやしくも詩が前衛だなんていうなら、横書きだっていいじゃないか、でも僕はわずらわしいから、黙って批判さしておきました。
詩がいつから保守的になったか、そんなこと興味さえもはやありませんが。

さて、この作品集は56章で構成されています。最後まで読むのは大変だと思います。
なぜって51章までだらだら散乱した世界が語られ続けていくのですもの。52章から終章までが本題ですが。

1995年1月17日に大きな地震があり、マンションの8階に住んでいた僕はこの地域に住んでいた人々と同じ思い、つまりマンションが折れた、崩壊してお陀仏、チン。死がそこまで迫っていました。
その思いを書くためにだらだら51章を書いて、ここに、52章から終章まで紹介いたします。

散乱するものの再生 第52章

天井の裂け目から
無数の手が突き出している

分解された裂け目に水が流れている

天井から突き出た手が
水をつかもうとしている

第53章

瓦礫の中から
無数の足が突き出している

そこには無数の足と
無数の手が

水が裂け目を流れている
足と手が浮かんでいる

第54章

耳の中には地鳴りが残響する
柱が倒れる

柱が倒れると
天井に裂け目ができる

裂け目に
無数の手と足が浮かんでいる

第55章

無数の手足が浮かんでいる
無数の手足が浮かんでいる

だが手足だけではない
浮かんでいるのは手足だけでは

固有の歳月とはなにか
裂け目を流れる川

終章

柱は倒れ
天井は破れ
手はちぎれ
足は突き出す

水は燃え
両眼はつぶれ
耳は飛び
地鳴りは走る

壁は崩れ
物音は絶え
裂け目は開き
すべてが浮かぶ