芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

秋亜綺羅詩集「透明海岸から鳥の島まで」

普通、辞書類と違って、詩集は1頁目から最終頁に向かって波がうねるように終焉していくものだが、この詩集の場合、まず「あとがき」から読み、その後、最初から最後に向かって波打って欲しい。それとも、「あとがき」に至って「そうだったのか」、こんな感慨を共有すべき内面劇なのかもしれない。「あとがき」の内容については、これ以上触れない。読者になる以外、それは秘密である。

第一詩集が1971年、詩人が二十歳くらいのときに発表され、この第二詩集が2012年8月31日発行となっているから、それは「あとがき」の出来事にも関係するのだろうが、40年余りの歳月が流れている。人は沈黙をゴールドと呼ぶ。
ひとりぼっちのコンサート。もちろんハードもあれば、バラードもある。すべて水溶性の言葉だから、読後、消化不良を起こさない、言葉が消滅する。そんなステキで淋しい鎮魂歌である。

秋亜綺羅著「透明海岸から鳥の島まで」 思潮社 2012年8月31日発行