芦屋芸術|芸術誌・現代詩・小説

骨の体で

 壊して欲しい、あなたの声が聴こえた。だったら、何故壊してほしいの、Mはリカに尋ねた、ボクに教えて。

 

 ダメよ、そんなこと。また、リカの声。いったいこれって何だろうか。どうして、わけを話してくれないんだろうか。一度は、愛しあったじゃないか。別れてもう十二年、経ってしまったけれど。

 

 これだけは確かだった。十二年前、あの時、既にリカは壊れてしまった。骨だけになってM の眼前に横たわっていた。でも、まだ、リカは生きていた。いや、どうも生きている気配がした。毎日、出てきた。いろんな場所から。二階の彼女の部屋のベッドに仰向けに寝転んで笑っていたり、ウォークインクローゼットの中に立っていたり。

 

 Mの脳裏にときおりこんな言葉が浮かんでいる。

 結局、ボクはどうしたらいいんだろう。リカって、ボクの何だろうか。恋人でも、愛人でもない。ボクは骨だけの体を愛し続けて、いつか、わからないけど、この世から離れていくのだろう。

 

 さらに、Mの脳裏にこんな言葉が浮かぶのだった。

 その時、ボクの骨の体と、リカの骨の体は、もう一度、激しく愛しあうのだった。この世で愛しあった時よりも。もっと、激しく。