どこかで恐ろしいことが起っているようだ。まだ実態は不明だが。
この近所でも、見知らぬ女の顔だけが無数に出てくる、というか、際限なく変形していくんだ。まさかというかもしれないが、まあ、想像してみてくれ。般若づらした女がにゅるにゅるうごめきながらお多福顔した女になったかと思えば、グチャグチャ波打って中央から盛り上がって狐女になっていたり。ちょっと極端な例を挙げてみたんだが。
それに、女だけじゃないんだよ。過去のビジネスのさまざまな場面が流れ込んで男の死体があちらこちらで腐乱して肉が崩れて骨が光っている。ほとんど骸骨。可哀想に、あの時代の面影はすっかり消えてしまって。
まったく不可思議千万じゃないか。だって、女の顔はすべて生体なのに、男の方は何で骸骨なんだ。ひょっとしたらこんなことをあなたにお伝えしている男の私だって既に骸骨かもしれないじゃないか。どうだ。リカちゃん、試しにこの手を握ってくれないか。
イヤな時代になったもんだね。生きてるのは女だけ。もちろん、当たり前の話かもしれんが、私は女の死体より生体の方がずっと好きなんだけど。悔しいけれど、誰も私を振り向いてはくれないが。
いやはや。最近は、もっとひどい時代になっていくようだね。すべてがバラバラで存在しているようだ。だからもう生体か、それとも死体か、この問いですら無意味になってしまった。ホラ、あれをご覧。鼻は鼻だけで食卓の上を歩いているだろう。