芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

酒を捨てる

 ボクのワイフが亡くなってちょうど二年半。今年の一月十九日の月命日、深夜、夢の中で、彼女が来た。

「とんちゃん、もうお酒を飲むの、止めな」

 だから、ここ数日、家では酒を飲んでいない。ただ、晩飯を外食した時、生ビール一杯だけ。

 十年くらい昔、外食した時以外、ボクは家では酒を飲まないと彼女に約束した。そして、昼も夜も彼女を外食に誘った。ついに、彼女はこう言った。

「とんちゃん、そんなに飲みたいんだったら、お家で飲めばいいじゃん」

 ワイフが亡くなってから二年半、毎日、彼女の遺影と骨壷を前にして、昼間から焼酎を飲んでいる。確か彼女が亡くなって数ヵ月後、お友達のI子さんから電話でこんな話を耳にした。

「えっちゃんは、毎日とんちゃんがお酒を飲むので、それだけを心配していました」

 長い間、酒はボクの大切なお友達だった。月命日の夜、ボクはだいの仲良しさんと別れた。ひとりぼっちになった。