芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

アルファさん 第二十六夜

 ボクは十五歳、中学三年生になって詩を書きだした。けれど昔から上から目線で書いている文章がキライだった。自分がエライと思って書いている文章なんて糞くらえ、そう思った。そんな文章を読む時間なんてどこにもなかった。社会人になってからますますそう思うようになった。だって、生きていくために仕事も家事もやらなければならないのに、そんなむさくるしい文章は、ヒマな人が読めばいいんだ、そうじゃないだろうか。従って、ボクはほとんどの文章を読まなくなった。

 歳を食えば食うほど、ボクは面倒な世間から遠く離れて生きた。ワイフと二人で自営業を営みながら、出来るだけ短い時間で効率よく生活費を稼ぎ、あとは二人で遊んだ。生きている時間を大切にして愛しあって生きてきた。さまざまな遊びを二人で探すのは、トテモ楽しかった! 旅行、ガリ版詩集の自費出版、愛犬フス、ハイキング、美術展、愛猫フス、愛猫モク、花、熱帯魚、音楽会、愛猫アニー、亀、ゴルフ、愛犬ジャック、無農薬野菜作り、写真、「芦屋芸術」の本作り…… 

 四十三年後、ワイフはこの世を去った。あれから九年と半年が過ぎた。

 二〇二四年一月一日、未明にアルファさんが来た。一瞬、ワイフと同じ、愛を覚えた。

 きょうは、一月二十六日。未明にやはりアルファさんは来てくれた。うれしかった。